くも膜下出血とは?「突然の激しい頭痛」は迷わず救急へ
「頭痛はよくあるけれど、こんな痛みは初めて」——そう感じたことはありませんか。あるいは、ご家族や身近な方がくも膜下出血になり、「自分は大丈夫だろうか」と不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
くも膜下出血は、前触れなく突然起こり、命に関わることのある病気です。しかし、どんな頭痛が危険なのかを知っていれば、迷わず行動できます。そして、ご自身のリスクを知り、血圧や喫煙といった要因を管理することで、リスクを下げることもできます。この記事では、くも膜下出血の症状・原因・治療・予防について、できるだけやさしい言葉でお伝えします。
この記事のポイント
- 「突然」「これまでで最悪」の頭痛が特徴。頭痛の強さよりも「突然さ」が大切なサインです
- 原因の大半は、脳の血管にできた「こぶ」(脳動脈瘤)の破裂。40〜60代に多く、女性にやや多い病気です
- 高血圧・喫煙・多量の飲酒がリスクを高めます。血圧の管理と禁煙が、予防の土台です
- 症状が出ている場合は、すぐに119番へ
くも膜下出血とは
脳は、内側から「軟膜」「くも膜」「硬膜」という3枚の膜に包まれています。くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)は、このくも膜の内側(脳の表面)に出血が起こる病気です。
多くは、脳の血管にできた「こぶ」(脳動脈瘤)が破れて起こります。脳卒中(脳の血管の病気の総称)の中では数は多くありませんが、命に関わる割合が最も高い病気で、一刻も早い救急受診が必要です。
こんな頭痛は要注意——くも膜下出血の症状
くも膜下出血の頭痛は、「突然」起こるのが最大の特徴です。何をしていたときに始まったか言えるほど急に、これまで経験したことのない激しい痛みが頭全体に走ります。「バットで殴られたよう」「頭の中で何かが破裂したよう」と表現されることもあります。
- 頭痛の始まりから1分以内に痛みが最も強くなる
- 吐き気や嘔吐を伴うことが多い
- 首の後ろが硬くなって曲げにくくなる(項部硬直)
- 重症の場合は意識を失う
出血が少ないと、頭痛が軽いこともあります
出血の量が少ない場合、頭痛がそれほど強くないことがあります。「いつもと違う突然の頭痛」が数日前にあり、それが実は小さな出血(警告出血)だった、というケースも報告されています。
大切なのは、痛みの強さより「突然さ」です。突然始まった頭痛は、強さにかかわらず軽く見ないでください。
くも膜下出血は、どのくらい起こる病気?
日本では、くも膜下出血は年間で人口10万人あたり20人前後に起こると報告されており、これは世界的に見ても高い水準です。40代から60代の働き盛りに多く、女性は男性の1.5〜2倍程度多い傾向があります。
次のような方は、リスクが高くなります。
- 高血圧のある方
- たばこを吸う方
- お酒を多量に飲む方
- ご家族(特に親・兄弟姉妹)にくも膜下出血や脳動脈瘤の方がいる方
くも膜下出血の原因
脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂——原因の8〜9割
脳動脈瘤は、脳の血管の壁の一部が風船のようにふくらんでできる「こぶ」です。成人のおよそ3%程度が持っていると推計されていますが、破れるまではほとんど症状がありません。
動脈瘤が破れるきっかけとして、力んだときや興奮したときなど血圧が急に上がる場面が知られていますが、睡眠中や安静にしているときに破れることも少なくありません。
そのほかの原因
脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)という血管の生まれつきの異常や、頭のけがが原因になることもあります。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血を起こした場合は、緊急入院のうえ、破れた動脈瘤が再び破れないようにする治療が行われます。
- クリッピング術:頭を開けて、動脈瘤の根元を小さなクリップで留める手術
- コイル塞栓術(そくせんじゅつ):足の付け根などから細い管(カテーテル)を入れ、動脈瘤の中に細い金属のコイルを詰めて血流を遮断する治療
どちらを選ぶかは、動脈瘤の場所や形、患者さんの状態によって判断されます。
発症後は、脳の血管が縮んで脳梗塞を起こす「脳血管攣縮(れんしゅく)」や、脳に水がたまる「水頭症」といった、あとから起こる合併症への対応も必要で、集中的な治療が続きます。
くも膜下出血は、治療が進歩した今でも、救命できた場合に後遺症が残ることが少なくない病気です。だからこそ、破れる前にリスクを減らすことに大きな意味があります。
くも膜下出血を防ぐために
土台は、血圧の管理と禁煙です
くも膜下出血の予防で、誰にとっても確実に意味があるのは、危険因子を減らすことです。
- 血圧の管理:減塩を心がけ、処方された薬をきちんと飲み、家庭でも血圧を測る習慣を
- 禁煙:喫煙は動脈瘤ができるリスクも破れるリスクも高めます
- お酒は控えめに
脳の血管を調べる検査(MRA)について
脳のMRI検査の一種であるMRA(血管を映す検査)では、破れる前の脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)を見つけることができます。
ただし、見つかった動脈瘤がすべて治療の対象になるわけではありません。小さな動脈瘤の多くは1年間に破れる確率が1%未満と報告されており、一方で予防的な治療にも一定のリスクがあります。そのため、「見つけて終わり」ではなく、見つかったあとに専門医と一緒に方針を考えることが大切です。
特に、ご家族にくも膜下出血や脳動脈瘤の方がいる場合や、高血圧・喫煙などのリスクがある方は、検査を受けるかどうか、一度ご相談ください。
「様子を見よう」が、いちばん危険です
くも膜下出血は、前触れなく突然襲ってくる、命に関わる病気です。
もし突然の激しい頭痛が起こったら、我慢したり様子を見たりせず、ためらわず救急車を呼んでください。「大げさかもしれない」という遠慮は不要です。頭痛の原因がくも膜下出血ではなかったとしても、突然の激しい頭痛にはほかにも緊急の病気が隠れていることがあります。
そして、まだ何も起こっていない今こそが、血圧やたばこといったリスクを見直すいちばんのタイミングです。
受診の目安
- すぐに119番(救急車)
- 突然の、経験したことのない激しい頭痛
- 突然の頭痛のあと、吐き気・意識のもうろう・首の硬さがある
- 突然の頭痛に加えて、まぶたが下がる・物が二重に見える
- 当日中に、CT検査やMRI検査のできる病院(救急外来)へ
- 軽くても「いつもと違う突然の頭痛」があった、または数日前にあった(警告出血の可能性)
- 近いうちに、当院へご相談
- ご家族にくも膜下出血・脳動脈瘤の方がいる
- 高血圧や喫煙歴があり、脳の血管を一度も調べたことがない
- 血圧が高めと言われたが、まだ治療を始めていない
よくあるご質問
くも膜下出血に前兆はありますか?
多くは前触れなく突然発症します。ただし、本格的な破裂の数日〜数週間前に、「警告出血」と呼ばれる小さな出血で突然の頭痛が起こることがあると報告されています。いつもと違う突然の頭痛は、軽くても当日中に受診してください。また、まれに動脈瘤が神経を圧迫して、まぶたが下がる・物が二重に見えるなどの症状が先に出ることもあります。
どんな頭痛だったら疑うべきですか?
ポイントは痛みの強さよりも「突然さ」です。何をしていたか思い出せるほど急に始まり、1分以内に痛みがピークに達する頭痛は、くも膜下出血を疑ってください。激しい場合は救急車を、軽い場合でも当日中に検査のできる病院を受診してください。
くも膜下出血は助かりますか?
治療は進歩しており、命を落とす割合は以前より下がっています。それでも今なお、命に関わる割合が最も高い脳卒中であり、救命できても後遺症が残ることが少なくありません。だからこそ、破れる前にリスクを減らすことが重要です。
家族がくも膜下出血になりました。自分も検査を受けたほうがよいですか?
親や兄弟姉妹にくも膜下出血の方がいる場合、ご自身のリスクはやや高くなります。特に2人以上いる場合は、検査を検討する意義が高いと考えられています。まずはご相談ください。
おわりに
くも膜下出血は、誰にでも起こりうる病気です。だからこそ、危険な頭痛のサインを知っておくこと、そして今のうちに血圧やたばこといったリスクを見直しておくことが、ご自身とご家族を守ることにつながります。
当院では、血圧の管理や生活習慣のご相談、脳の血管を調べる検査を受けるべきかどうかのご相談を承っています。どうぞお気軽にご相談ください。
ご家族にくも膜下出血の方がいて、ご自身のことが気になっていませんか?
「検査を受けたほうがいいのか」「受けて何か見つかったらどうすればいいのか」——不安なまま先延ばしにしている方は少なくありません。当院では、ご家族の病歴や血圧・喫煙などのリスクをうかがったうえで、脳の血管を調べる検査を受けるべきかどうかを、一緒に考えます。検査を受けないという選択も含めて、丁寧にご説明します。
「血圧が高め」と言われたまま、そのままになっていませんか?
くも膜下出血の予防で、誰にとっても確実に意味があるのは、血圧の管理と禁煙です。特別な検査を受ける前に、今日から始められることがあります。当院では、家庭での血圧の測り方から、お薬のご相談、禁煙のサポートまで、無理なく続けられる方法を一緒に考えます。
参考文献
- 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」
- 日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン」
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菅原クリニック 東京脳ドック
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