脳出血とは?高血圧との関係・症状・予防
寒い朝、脱衣所やトイレで力んだ直後に、突然の激しい頭痛と手足の脱力が——。脳出血は、そんなふうに何の前触れもなく、日常のありふれた場面で突然起こります。
健診で血圧を指摘されたまま、忙しくて放置している。薬はもらっているけれど、飲んだり飲まなかったり。そんな心当たりはありませんか。このコラムでは、脳出血がなぜ起こるのか、どんな症状に気をつけるべきか、そして今日からできる予防についてお伝えします。
この記事のポイント
- 脳出血は脳の中の細い血管が破れる病気で、最大の原因は高血圧です。日本における脳卒中の約2割を占めます
- 突然の片方の手足の麻痺・ろれつの回りにくさ・激しい頭痛・嘔吐が典型的な症状です。ためらわず119番してください
- 予防の柱は血圧の管理です。家庭で血圧を測る習慣と減塩が、脳を守る基本です
脳出血とはどんな病気?
脳出血(のうしゅっけつ)は、脳の中の細い血管が破れて、脳の内部に出血する病気です。あふれた血液のかたまりが脳を圧迫し、傷つけてしまいます。
症状は突然起こります。出血した場所によって異なりますが、代表的なものは、片方の手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出ない、頭痛、吐き気・嘔吐、めまい、意識がもうろうとする、などです。出血が大きい場合は、短時間のうちに意識障害が進むこともあります。
これらの症状は、脳の血管が「詰まる」脳梗塞ととてもよく似ており、外から見分けることはできません。区別にはCTやMRIといった画像検査が必要です。どちらであっても対応は同じで、「様子を見ずに、すぐ救急車」です。
どのくらいの人が起こすの?
脳出血は、日本の脳卒中のうち約2割を占めます。かつての日本では脳卒中といえば脳出血が中心でしたが、降圧薬の普及と減塩の広がりとともに減ってきました。それでも高齢化に伴い、患者さんの数は依然として多く、決してまれな病気ではありません。
高血圧のある方、お酒を多く飲まれる方、高齢の方に多く起こります。また、脳卒中は冬に多く、寒い場所での急な血圧上昇が引き金になると考えられています。暖かい居間と寒い脱衣所・トイレの温度差は、見過ごされがちな注意点です。
なぜ起こるの?——最大の原因は高血圧
長年、高い血圧にさらされ続けた脳の細い血管は、壁がもろく、破れやすくなっています。そこに血圧の急上昇が加わると、血管が破れて出血します。これが脳出血のもっとも典型的な成り立ちです。
高血圧のほかにも、原因はあります。加齢とともに脳の血管にアミロイドというたんぱく質がたまり、血管がもろくなるタイプ(脳アミロイド血管症・のうアミロイドけっかんしょう)は、高齢の方の脳出血の原因としてよく知られています。また、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬など)を飲んでいる方は出血の危険が高まること、血管の生まれつきの異常(脳動静脈奇形など)が関係することもあります。
多量の飲酒は、脳出血の危険を高めることが分かっています。喫煙も脳卒中全体の危険因子であり、禁煙は脳を守るうえで大切です。
どんな治療をするの?
脳出血を起こした場合は、緊急入院のうえ、まず血圧を下げて出血の拡大を防ぐ治療が行われます。出血の場所や大きさによっては、血液のかたまり(血腫)を取り除く手術が検討されることもあります。こうした急性期の治療は、脳血管の治療を専門とする医療機関で行われます。
急性期を乗り越えたあとは、リハビリテーションで機能の回復を図りながら、再発予防に取り組む段階になります。脳出血の再発予防の柱は、なにより血圧のコントロールです。血圧をしっかり下げることで脳出血の再発が減ることは、大規模な研究で確かめられています。
当院では、退院後の血圧管理・再発予防のフォローアップを行っています。「退院したものの、この血圧管理でよいのか不安」という方は、ご相談ください。
予防のためにできることは?
脳出血の予防の中心は、血圧の管理です。
塩分を控えること。処方された降圧薬を自己判断でやめないこと。そして、家庭で血圧を測る習慣をつけることです。診察室では正常でも家庭では高い「仮面高血圧(かめんこうけつあつ)」もあり、家庭血圧はご自身の本当の血圧を知る手がかりになります。
家庭で測った血圧が135/85mmHg以上なら高血圧の目安とされていますので、続くようであればご相談ください。
飲酒は適量を守り、禁煙にも取り組みましょう。冬場は、脱衣所やトイレを暖めて家の中の温度差を減らす工夫も役立ちます。運動を禁止する必要はありません。むしろ適度な運動は血圧を下げる方向に働きます。
MRI/A検査では、脳の血管の状態や、過去の小さな出血の痕跡(微小出血・マイクロブリーズ)を確認できることがあり、ご自身のリスクを知るうえで役立ちます。
これって受診すべき?——緊急度の目安
- すぐに119番
- 突然の片方の手足の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、激しい頭痛、嘔吐、意識がもうろうとしている
- 上記の症状が数時間以内に出て消えた(症状が消えていても、救急車を呼んで構いません)
- 当日中に受診
- 近いうちに当院へご相談
- 健診で高血圧を指摘されたまま、治療をしていない
- 血圧の薬を飲んでいるが、家庭での血圧が高いまま
- 高血圧・多量飲酒などのリスクがあり、脳の血管を一度も調べたことがない
救急車を呼ぶべきか迷ったときは、救急安心センター事業「#7119」に相談することもできます。お住まいの地域によっては利用できない場合がありますのでホームページでご確認ください。
総務省消防庁ホームページ「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」
よくあるご質問
脳出血と脳梗塞はどう違うのですか?
脳出血は血管が「破れる」病気、脳梗塞は血管が「詰まる」病気です。症状はよく似ていて、外からは区別できません。区別には画像検査が必要ですので、どちらを疑う場合も、すぐに救急車を呼んでください。
血圧がどのくらいだと危険ですか?
血圧が高いほど脳出血の危険が上がり、はっきりした「安全なライン」があるわけではありません。診察室で140/90mmHg以上、家庭で135/85mmHg以上が高血圧の目安です。ただし、治療で目指す血圧は年齢や持病によって一人ひとり異なりますので、健診で指摘されたら放置せず、ご自身の目標値と治療方針を医師と確認することが大切です。
脳出血に前兆はありますか?
脳出血は前触れなく突然起こることがほとんどです。だからこそ、日頃の血圧管理と、ご自身の脳血管の状態を知っておくことが、いちばんの備えになります。
一度なったら、また再発しますか?
脳出血は再発することがある病気です。再発予防の柱は血圧のコントロールで、しっかり下げることで再発が減ることが分かっています。降圧薬を自己判断でやめず、家庭血圧の測定を続けましょう。当院で退院後のフォローアップも行っています。
おわりに――血圧の管理が、そのまま脳を守ります
脳出血は後遺症が残ることも少なくない病気ですが、原因の中心が高血圧とはっきりしているぶん、予防の道筋も明確です。日々の血圧管理という地道な取り組みが、そのまま脳出血の予防につながります。
次のうち、1つでも当てはまる方はご相談ください
- 健診で血圧を指摘されたが、そのままにしている
- 降圧薬を飲んでいるが、家庭血圧を測っていない
- 家族に脳出血・脳卒中になった人がいる
- 脳の血管の状態を一度も調べたことがない
健診の結果をそのままにしていることを、責める必要はありません。忙しい毎日の中では、誰にでもあることです。大切なのは「今」からです。まずは今の血圧を一緒に確認するところから始めませんか。健診の結果表をお持ちいただければ、治療が必要かどうか、その場でご説明します。
「受診するほどかどうか分からない」という方は、まず1週間、朝と夜に家庭で血圧を測ってみてください。その記録を持ってお越しいただければ、診察がとてもスムーズになります。測り方が分からない、血圧計を持っていないという方も、そのままご相談ください。
参考文献
- 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン 改訂2025」
- 日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2026」中外医学社
- 公益社団法人日本脳卒中協会 https://www.jsa-web.org/
気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください
-
赤坂
菅原クリニック 東京脳ドック
- 住所
- 東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル2F
- アクセス
- 千代田線 赤坂駅より徒歩5分
- 診療時間
- 月〜土 9:00〜17:00(日・祝休診)
-
八王子
菅原脳神経外科クリニック
- 住所
- 東京都八王子市万町175-1 八王子クリニックビレッジ内
- アクセス
- JR八王子駅 南口徒歩8分
- 診療時間
- 月〜土 9:00〜12:30/14:00〜17:00(日・祝休診)









