脳梗塞とは?前兆のサイン・治療・再発を防ぐ生活
「片方の手が急に動かしにくくなった」「ろれつが回らなくなったけれど、しばらくしたら治った」——そんな経験があり、「病院に行くほどではないか」と迷っていませんか。あるいは、健康診断で血圧や不整脈を指摘され、脳の病気が心配になった方もいらっしゃるかもしれません。
脳梗塞は、突然起こり、その後の生活を大きく変えることのある病気です。しかし、サインを知っていれば早く治療につなげることができ、日々の管理でリスクを下げることもできます。この記事では、脳梗塞の症状・原因・治療・予防を、できるだけわかりやすくお伝えします。
この記事のポイント
- 顔のゆがみ・片方の腕の力が抜ける・ろれつが回らない——このどれかが突然起こったら、すぐに119番(救急車)を
- 症状がすぐに消えても安心はできません。「一過性脳虚血発作(TIA)」は脳梗塞の前触れです
- 原因の多くは動脈硬化と心房細動(不整脈の一種)。血圧の管理と定期的なチェックで、リスクを下げられます
脳梗塞とは
脳梗塞(のうこうそく)は、脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、その先の脳の細胞が傷ついてしまう病気です。
脳の血管の病気をまとめて「脳卒中(のうそっちゅう)」と呼びますが、脳梗塞はその中で最も多く、日本では脳卒中全体の約7割を占めます。
脳の細胞は血液が届かなくなると短時間で傷んでいくため、治療は時間との勝負です。早く治療を始められるほど、後遺症を軽くできる可能性が高くなります。
こんな症状が突然出たら——脳梗塞のサイン
脳梗塞の症状は、「突然」起こるのが特徴です。詰まった血管の場所によって症状は異なりますが、代表的なものは次のとおりです。
- 顔の片側がゆがむ、口の片側から水がこぼれる
- 片方の手足に力が入らない、しびれる
- ろれつが回らない、言葉が出てこない、相手の話が理解できない
- 片方の目が見えない、視野の半分が欠ける、物が二重に見える
- ふらついてまっすぐ歩けない、激しいめまい
覚えておきたい合言葉「FAST(ファスト)」
| 頭文字 | 意味 | チェックのしかた |
|---|---|---|
| Face(顔) | 顔のゆがみ | 「イー」と笑ってもらい、片側が下がっていないか |
| Arm(腕) | 腕の脱力 | 両腕を前に上げてもらい、片方が下がってこないか |
| Speech(言葉) | 言葉の障害 | 短い文を話してもらい、ろれつや言葉がおかしくないか |
| Time(時間) | 発症時刻・すぐ通報 | 1つでも当てはまれば、「最後に普段どおりだった時刻」を確認して、すぐ119番 |
「最後に普段どおりだった時刻」は、病院で治療法を決める重要な情報になります。分かる範囲でメモしておいてください。
「すぐ治った」は前触れかもしれません——一過性脳虚血発作(TIA)
脳梗塞と同じ症状が、数分から数十分で消えてしまうことがあります。これを「一過性脳虚血発作(TIA:ティーアイエー)」と呼びます。
TIAは、一時的に血管が詰まりかけて、その後たまたま血流が戻った状態です。「治ったから大丈夫」ではなく、本格的な脳梗塞の前触れと考えてください。TIAのあとに脳梗塞を起こす危険は、特に最初の数日間に高いことが分かっています。
症状が消えていても、その日のうちに必ず受診することがおすすめです。
脳梗塞は、どのくらい起こる病気?
脳梗塞は、日本の脳卒中の中で最も多く、約7割を占めます。年齢が上がるほど増えますが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病があれば、働き盛りの世代でも起こります。
また、脳梗塞は再発しやすい病気です。日本の地域住民を長期間追跡した研究では、一度脳梗塞を起こした方のうち、5年で約3人に1人、10年で約半数が再発していました。だからこそ、一度起こした方は、再発予防の治療と生活管理を続けることがとても大切です。
脳梗塞の原因——大きく3つのタイプ
1. 太い血管が動脈硬化で詰まるタイプ(アテローム血栓性脳梗塞)
高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)・喫煙などで動脈硬化が進み、血管が細くなって詰まります。首の血管(頸動脈)の動脈硬化が原因になることもあります。
2. 細い血管が詰まるタイプ(ラクナ梗塞)
脳の奥にある細い血管が詰まります。高血圧が最大の原因です。
3. 心臓でできた血のかたまりが流れてくるタイプ(心原性脳塞栓症)
「心房細動」という不整脈があると、心臓の中で血液がよどんで血のかたまり(血栓)ができやすくなります。それが流れて脳の太い血管を突然ふさぐため、重症になりやすいのが特徴です。心房細動があると脳梗塞の危険は数倍高くなりますが、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)でリスクを大きく下げられます。
脈が飛ぶ・乱れる、動悸がする、という方は、一度、内科(循環器科)で心電図の検査を受けましょう。
脳梗塞の治療
発症直後の治療(急性期)
詰まった血管を再び開通させる治療があります。
- t-PA(ティーピーエー)静注療法:血栓を溶かす薬を点滴します。原則として発症から4.5時間以内に始める必要があります
- 血栓回収療法:足の付け根などから細い管(カテーテル)を入れ、血栓を直接取り除きます。太い血管が詰まった場合に行われ、発症から通常6時間以内、条件によっては24時間以内まで検討されます
どちらも受けられる時間に限りがあり、早いほど効果が期待できます。「疑ったらすぐ救急車」が大切なのは、このためです。
急性期を過ぎたあと(再発予防)
原因のタイプに応じて、血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)を使い、高血圧・糖尿病・脂質異常症などをしっかり管理します。あわせて、リハビリテーションで体の機能の回復を目指します。
退院後も、薬と生活習慣管理を続けていくことが再発を防ぐ鍵になります。
脳梗塞を防ぐための生活
予防の基本は、動脈硬化を進めないことと心房細動を見逃さないことです。
- 血圧の管理:最も重要です。減塩を心がけ、処方された薬をきちんと飲み、家庭でも血圧を測る習慣をつけましょう
- 糖尿病・脂質異常症の治療:数値が落ち着いていても、自己判断で通院や薬をやめないことが大切です
- 禁煙・お酒は控えめに・適度な運動
- 心房細動のチェック:自覚症状がないこともあります。健診で指摘されたら放置せず受診しましょう
脳ドックについて
脳のMRI検査で、症状のない小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)や、脳・首の血管の動脈硬化の程度を確認できます。危険因子をお持ちの方は、ご自身の状態を知る手がかりになります。
※脳ドックは自費の検査です。内容・費用は脳ドックのご案内ページをご覧ください。
「様子を見よう」が、いちばん危険です
脳梗塞は、突然人生を変えてしまうことのある病気です。しかし、発症してすぐの治療で回復の可能性が高まり、日々の管理で発症や再発のリスクを下げられる病気でもあります。
FASTのサインに気づいたら、迷わず救急車を。すぐ治った症状(TIA)も、必ずその日のうちに受診してください。そして、健診で血圧や不整脈を指摘された方は、「まだ症状がないから」と先延ばしにせず、一度ご相談ください。
受診の目安
- すぐに119番(救急車)
- 顔のゆがみ・片腕の脱力・ろれつが回らない、が突然起こった
- 突然、体の片側だけがしびれた、力が入らなくなった
- その日のうちに受診
- しびれ・脱力・ろれつの回りにくさが出たが、すぐに治った(TIAの疑い)
- 近いうちに受診・ご相談
- 健診で心房細動・頸動脈の動脈硬化・高血圧・糖尿病などを指摘された
- 脳梗塞になったご家族がいて、ご自身にも生活習慣病がある
- 脳梗塞の退院後、かかりつけで再発予防の治療を続けたい(退院後の外来にも対応しています)
よくあるご質問
脳梗塞に前兆はありますか?
一過性脳虚血発作(TIA)が前触れになることがあります。片方の手足の脱力やろれつの回りにくさが数分〜数十分で消えた場合でも、数日以内に本格的な脳梗塞を起こす危険が高いため、治っていても必ずその日のうちに受診してください。
しびれだけでも脳梗塞のことがありますか?
あります。特に、体の片側だけに突然起こったしびれは要注意です。ほかの症状がなくても、突然起こった場合は救急車を呼んでください。じわじわと出てきたしびれや、両側に出るしびれは、脳梗塞以外の原因のことが多いですが、気になる場合はご相談ください。
脳梗塞は予防できますか?
完全に防ぐことはできませんが、危険因子の管理でリスクを大きく下げられます。血圧・血糖・コレステロールの管理、禁煙、心房細動のチェックが柱です。
一度なったら、また再発しますか?
脳梗塞は再発しやすい病気ですが、再発予防の薬をきちんと飲み続け、血圧などの管理を守ることでリスクを下げられます。自己判断で薬をやめないことが何より大切です。
血液を固まりにくくする薬は、ずっと飲み続けるのですか?
多くの場合、長く続けることになります。出血しやすくなるなどの注意点もあるため、気になることがあれば、やめる前に必ずご相談ください。
おわりに
「もしかして」と思ったその瞬間の判断が、その後の人生を左右することがあります。脳梗塞のサインを知り、リスクを管理することは、ご自身とご家族を守ることにつながります。
当院では、健診で指摘された血圧や不整脈のご相談から、脳梗塞後の再発予防まで、継続的にサポートしています。どうぞお気軽にご相談ください。
健診で「血圧が高め」「不整脈がある」と言われたまま、そのままになっていませんか?
脳梗塞の原因の多くは、症状のないうちから静かに進んでいます。「まだ何ともないから」と思っている今が、いちばん対策しやすいタイミングです。当院では、血圧の管理や心電図での不整脈のチェックなど、脳梗塞のリスクを一緒に見直すご相談を受け付けています。
脳梗塞後・退院された方とそのご家族様へ
退院後の再発予防、かかりつけとして一緒に続けていきます。
「薬はいつまで飲むの?」「血圧はどのくらいを目標にすればいい?」——退院後に不安を感じる方は多くいらっしゃいます。当院では、病院からの紹介状をもとに、お薬の継続・血圧や血糖の管理・生活のご相談まで、通いやすい場所で継続的にサポートします。ご家族の付き添いでのご相談も歓迎です。
気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください
-
赤坂
菅原クリニック 東京脳ドック
- 住所
- 東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル2F
- アクセス
- 千代田線 赤坂駅より徒歩5分
- 診療時間
- 月〜土 9:00〜17:00(日・祝休診)
-
八王子
菅原脳神経外科クリニック
- 住所
- 東京都八王子市万町175-1 八王子クリニックビレッジ内
- アクセス
- JR八王子駅 南口徒歩8分
- 診療時間
- 月〜土 9:00〜12:30/14:00〜17:00(日・祝休診)









