手足がしびれる・力が入らない|脳梗塞のサインを見逃さないために

公開日 監修:理事長 菅原 道仁(脳神経外科専門医)

朝、箸を持とうとしたら、右手に力が入らなかった。テレビを見ていたら、急に片方の腕がじんじんとしびれてきた。しびれはすぐに治まったけれど、なんだか胸騒ぎがする。——そんな経験はありませんか。

手足のしびれや力の入りにくさは、脳・脊髄(せきずい:背骨の中を通る神経の束)・末梢神経(まっしょうしんけい:手足に広がる細い神経)のどこに原因があっても起こる症状です。多くは首や末梢神経が原因ですが、「突然」「体の片側」に起こったしびれ・脱力は、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血のサインかもしれません。このコラムでは、見逃してはいけないしびれの特徴と、受診の目安をお伝えします。

この記事のポイント

  • 「突然起こった」「体の片側だけ」のしびれ・脱力は脳梗塞を疑い、すぐに受診を。症状が続いていれば、ためらわず救急車(119番)を
  • 数分で治っても安心はできません。一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前ぶれで、治っても急いで受診が必要です
  • ゆっくり進むしびれは首(頸椎)や末梢神経が原因のことが多いですが、自己判断せず検査で見分けましょう

まず確認:一つでもあれば、すぐに受診を

次のような場合は、脳梗塞・脳出血の可能性があります。ためらわず受診してください。症状が続いている場合は、クリニックではなく救急車(119番)を呼び、脳の緊急治療ができる病院へ向かってください。

  • 突然、体の片側(顔・腕・脚)にしびれや力の入りにくさが起こった
  • ろれつが回らない、言葉が出てこない
  • 顔の片側がゆがむ、口から水がこぼれる
  • 物が二重に見える、激しいめまいやふらつきをともなう
  • しびれや脱力が数分〜1時間ほどで消えた(一過性脳虚血発作の疑い。治ってもすぐに受診を)

「いつから」を必ず確認してください。

脳梗塞の治療(血のかたまりを溶かす薬や、カテーテルで取り除く治療)は、発症からの時間で受けられるかどうかが決まります。症状に気づいた時刻と、「最後に普段どおりだった時刻」(起床時に気づいた場合は、前の晩に元気だった時刻)をメモして救急隊に伝えてください。

覚えておきたい合言葉「FAST(ファスト)」

  • Face(顔):顔の片側がゆがむ
  • Arm(腕):片方の腕に力が入らない、上げられない
  • Speech(言葉):ろれつが回らない、言葉が出ない
  • Time(時間):一つでもあれば、すぐに119番。発症時刻をメモ

ご注意:症状があるときは、ご自身で車を運転して来院しないでください。

しびれ・脱力の原因には、どんなものがあるの?

原因 起こり方・特徴 いっしょに起こりやすい症状 対処の方向性
脳梗塞・脳出血(危険) 突然。体の片側に起こる ろれつが回らない、顔のゆがみ、物が二重に見える、めまい すぐ受診。続いていれば救急車
一過性脳虚血発作(TIA) 突然起こり、数分〜1時間ほどで消える 一時的なろれつの回りにくさなど 治ってもすぐに受診(脳梗塞の前ぶれ)
脳腫瘍・慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)など 数週間〜数か月かけてゆっくり進む片側の症状 頭痛、けいれん、ぼんやりする(慢性硬膜下血腫は頭を打った数週間後などに) 早めにMRI検査を
頸椎症(けいついしょう)など首・腰の病気 首や腰の動きで変化する。腕や脚に響く痛み・しびれ 首・肩・腰の痛み 画像検査で診断を
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)など末梢神経の病気 手先など決まった範囲のしびれ。夜間や朝に強いことも 親指〜中指のしびれ、細かい作業のしにくさ 神経の電気検査などで診断を
糖尿病などの内科的原因 両側の手足の先から、ゆっくり 足裏の違和感、靴下をはいているような感覚 原因となる病気(糖尿病、ビタミン不足、甲状腺、お酒、薬など)への対応を
片頭痛の前兆・過呼吸など 片頭痛:しびれが数分〜数十分かけてじわじわ広がり、その後に頭痛。過呼吸:両手や口のまわりがしびれる 頭痛、光がまぶしい/息苦しさ、動悸 診察で区別を。ただし初めての片側のしびれは脳の検査を優先

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病院ではどんな検査をするの?

診療では、しびれの起こり方(突然か、ゆっくりか)、範囲(片側か、両側か、手先だけか)、いっしょに起こった症状を詳しくうかがい、手足の力・感覚・反射などの神経の診察を行います。

脳が原因の可能性がある場合は、当院ではMRI検査で脳梗塞・脳出血・脳腫瘍などを確認し、あわせてMRA(脳の血管を映す検査)で血管の狭まりがないかを調べます。首が原因と考えられる場合は、頸椎のMRI検査を行うこともあります。原因の場所(脳・脊髄・末梢神経)を見極めることが、適切な治療への第一歩です。

なお、症状が続いている急性期の脳梗塞・脳出血は、緊急の治療が必要なため、当院ではなく脳血管の治療ができる病院へ救急車で向かっていただくのが最善です。診察の結果、緊急性が判明した場合は、連携する医療機関へ速やかにご紹介します。

受診の目安

  • すぐに119番
    • 片側のしびれ・脱力が今も続いている(特に、ろれつの回りにくさ・顔のゆがみをともなう場合)
  • できるだけ早く(その日のうちに)受診
    • 突然の片側のしびれ・脱力が、数分〜1時間ほどで消えた(TIAの疑い。夜間・休日なら救急外来へ)
  • 近いうちに当院へご相談
    • しびれが数日〜数週間続いている、少しずつ広がっている
    • 手先のしびれで細かい作業がしにくい、夜間や朝方にしびれが強い
    • 高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)・不整脈(心房細動)があり、脳梗塞が心配

よくあるご質問

しびれだけで、力は入ります。それでも脳梗塞のことがありますか?

あります。脳の感覚をつかさどる部分に小さな脳梗塞が起こると、しびれだけが症状になることがあります。特に、突然起こった片側のしびれは、脱力をともなわなくても早めに受診してください。

しびれが数分で治りました。受診は必要ですか?

必要です。突然の片側のしびれが短時間で消えた場合、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。TIAの後、数日以内に本格的な脳梗塞を起こす危険が高く、早く治療を始めることでその危険を大きく減らせることが研究で示されています。治っても、その日のうちに受診してください。

救急車を呼ぶか迷ったときは、どうすればよいですか?

救急安心センター事業「#7119」に電話すると、受診の緊急度について相談できます(地域により実施状況が異なります)。ただし、片側の脱力やろれつの障害が続いているときは、迷わず119番してください。

総務省消防庁ホームページ「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html)

地域により実施状況が異なりますので自治体のホームページなどで確認してください。

受診のとき、何を伝えるとよいですか?

いつから・体のどこが・どのようにしびれるか(じんじん、ぴりぴりなど)、突然かゆっくりか、どのくらい続いたか、首や腰の痛みの有無、持病と飲んでいる薬をメモしてお持ちいただくと、診察がスムーズです。

おわりに――「治まったから大丈夫」が一番危ない

しびれは「よくあること」と思われがちな症状です。しかし、突然の片側のしびれ・脱力だけは、たとえ治まっても放置しないでください。脳梗塞は、前ぶれの段階で対処できれば、その後の経過が変わる可能性があります。

手足のしびれ・力の入りにくさが気になる方へ

次のような方は、一度当院へご相談ください。

  • 突然の片側のしびれや脱力を経験したことがある
  • しびれが続いている・繰り返している
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈があり、脳梗塞が不安
  • 一度、MRIで脳と血管の状態を確認しておきたい

気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください

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