頭を打った|病院に行くべき症状と、家で様子を見るときのポイント

公開日 監修:理事長 菅原 道仁(脳神経外科専門医)

玄関の段差で転んで、頭を床にぶつけてしまった。お子さんが遊具から落ちて、頭を打った。たんこぶはできたけれど、本人は元気そうに見える。——「病院に行くべきか、様子を見てよいのか」。頭を打ったとき、誰もが迷うところではないでしょうか。

多くは心配のない打撲ですが、頭の中の出血は、直後には症状が出ないことがあります。このコラムでは、すぐ受診すべきサインと、家で様子を見るときのポイントをお伝えします。

この記事のポイント

  • 意識を失った・繰り返し吐いた・様子がおかしい場合は、すぐに受診(救急)を
  • 危険なサインがなければ、受傷後24〜48時間は、頭痛の悪化や嘔吐、ぼんやりなどの変化に注意して様子を見ましょう
  • 高齢の方や血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、軽い打撲でも受診を。数週間後に出てくる「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」にも注意が必要です

まず確認:一つでもあれば、すぐに受診を

頭を打った後、次のような場合は、様子を見ずに受診してください。意識の異常やけいれんがあれば救急車(119番)を呼んでください。

  • 一瞬でも意識を失った、打った前後のことを覚えていない
  • 繰り返し吐く(2回以上)
  • 頭痛がどんどん強くなる
  • けいれんを起こした
  • 手足のしびれ・力が入らない、ろれつが回らない、物が二重に見える
  • ぼんやりしている、呼びかけへの反応がおかしい、いつもと様子が違う
  • 耳や鼻から血液や透明な液体が出ている、目のまわりや耳の後ろに大きなあざが出てきた
  • 頭の骨がへこんでいる、傷が深い・出血が止まらない
  • 血液をさらさらにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる、65歳以上の方、飲酒していた場合(症状が軽くても受診をおすすめします)

小さなお子さん(特に2歳未満)の場合は、次の点にも注意してください。

  • 泣きやまない、不機嫌が続く、ぐったりして起きない
  • おでこ以外の場所に大きなたんこぶができた
  • 高い所から落ちた
  • 頭の骨のへこみやブヨブヨした腫れがある

ご注意:症状がある方は、ご自身で車を運転して来院しないでください。

頭を打った後には、どんな病気が起こりうるの?

病気 起こる時期 特徴 対処の方向性
急性の頭の中の出血(急性硬膜下血腫・硬膜外血腫など) 受傷直後〜数時間 意識障害、激しい頭痛、嘔吐、けいれん。いったん元気になった後に急に悪くなることもある 救急受診が必要
脳しんとう 受傷直後 頭痛、ふらつき、ぼんやり、吐き気、記憶のあいまいさ。意識を失わないことも多い 受診のうえ、短期間の安静と段階的な復帰を
慢性硬膜下血腫 受傷から数週間〜数か月後 じわじわ現れる頭痛、もの忘れ、歩きにくさ、片側の手足の動きにくさ。高齢の方に多い 受診を。手術で改善が見込めることが多い
単純な打撲・皮下血腫(たんこぶ) 受傷直後 打った部位の痛み・腫れのみ。意識や手足の異常なし 冷やして経過観察。変化があれば受診

関連する病気のくわしい解説

  • 慢性硬膜下血腫とは?頭を打って数週間後に出る症状に注意
  • 脳しんとうとは?スポーツや転倒後の対応

家で様子を見るときは、何に気をつければいいの?

危険なサインがなく様子を見る場合も、受傷後24〜48時間は注意が必要です。頭痛がひどくなっていないか、吐き気や嘔吐が出ていないか、ぼんやりしていないかを、ときどき確認しましょう。当日は激しい運動や飲酒を避け、ゆっくり過ごしてください。

眠らせても大丈夫です。「頭を打ったら寝かせてはいけない」と心配される方が多いのですが、普段どおりに眠ること自体は問題ありません。ただし、寝ている間も数時間おきに声をかけ、ふつうに目を覚まして受け答えができるかを確認してください。起こしても反応が鈍いときは、すぐに受診してください。

小さなお子さんや高齢の方は、症状をうまく伝えられないことがあります。「いつもと様子が違う」と感じたら、受診をためらわないでください。

また、その場では何ともなくても、数週間〜数か月後に、頭痛・もの忘れ・歩きにくさなどが出てくることがあります(慢性硬膜下血腫)。頭を打った日を覚えておき、後から症状が出たら「以前、頭を打った」と医師に伝えてください。

病院ではどんな検査をするの?

診療では、受傷の状況(いつ・どこを・どのくらいの強さで)と、意識を失ったか・吐いたかをうかがい、手足の力や感覚、眼の動きなどの神経の診察を行います。

必要に応じて、当院ではCTやMRIなどの画像検査で、頭の中の出血や骨折がないかを確認します。打った直後の出血や骨折はCTで確認し、数週間後の慢性硬膜下血腫はCT・MRIのどちらでも確認できます。なお、小さなお子さんは放射線の影響を考え、危険なサインがなければ画像検査をせずに経過を見ることが国際的にも推奨されています。診察のうえで判断しますので、ご安心ください。

緊急の手術が必要な場合は、頭部外傷の治療ができる医療機関へ速やかにご紹介します。意識の異常やけいれんがある場合は、当院ではなく最初から救急車で搬送先の病院へ向かってください。

受診の目安

  • すぐに119番
    • 意識がない・もうろうとしている、けいれんを起こした、繰り返し吐いている
  • 当日中に受診
    • 一瞬でも意識を失った、打った前後のことを覚えていない
    • 頭痛が強くなってきた、手足のしびれや物の見えにくさが出てきた
    • 抗血栓薬を飲んでいる・65歳以上・飲酒時の打撲(症状が軽くても)
    • お子さんで、泣きやまない・不機嫌が続く・高い所から落ちた
  • 近いうちに当院へご相談
    • 打ってから数週間〜数か月たって、頭痛・もの忘れ・歩きにくさが出てきた
    • 症状はないが、打ちどころが心配で一度診察を受けておきたい

よくあるご質問

たんこぶができました。冷やせば大丈夫ですか?

意識や手足の異常がなく、痛みと腫れだけであれば、冷やして様子を見てよいことが多いです。ただし、頭痛の悪化・嘔吐・ぼんやりなどが出てきたら、すぐに受診してください。2歳未満のお子さんでおでこ以外に大きなたんこぶができた場合は、念のため受診をおすすめします。

打った直後は元気でした。もう安心してよいですか?

受傷後24〜48時間は変化に注意してください。頭の中の出血は、いったん元気に見えた後に症状が出ることがあります。また、特に高齢の方では、数週間〜数か月後に慢性硬膜下血腫が起こることがあります。後から頭痛やもの忘れ、歩きにくさが出てきた場合は受診してください。

頭を打った後、寝かせてもよいですか?

眠ること自体は問題ありません。ただし、数時間おきに声をかけて、きちんと目を覚まし受け答えができるか確認してください。起こしても反応が鈍い、いつもと違うと感じたら受診してください。

血液をさらさらにする薬を飲んでいます。軽くぶつけただけでも受診すべきですか?

受診をおすすめします。抗血栓薬を飲んでいる方は、軽い打撲でも頭の中に出血することがあり、症状が出るまでに時間がかかることもあるためです。お薬手帳をお持ちのうえ、飲んでいる薬を必ず伝えてください。

受診を迷うとき、相談できるところはありますか?

救急安心センター事業「#7119」(地域により実施状況が異なります)や、お子さんの場合は小児救急電話相談「#8000」で、受診の緊急度を相談できます。明らかな意識の異常やけいれんがあれば、迷わず119番してください。

おわりに――「打った」ことを、忘れないでください

頭を打ったとき、いちばん危ないのは「大丈夫そうだから」とそのまま忘れてしまうことです。頭の中の出血には、時間がたってから現れるものがあります。打った事実をご家族と共有し、気になる変化があれば、いつでもご相談ください。

次のような方は、当院へご相談ください。

  • 頭を打って、受診すべきか迷っている
  • 打った後、頭痛やぼんやり、もの忘れが出てきた
  • 高齢の家族が転倒して頭を打った
  • 念のため、診察や画像検査で確認しておきたい

参考文献

  • 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」 https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html

気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください

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