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脳腫瘍とは?——頭痛・けいれんなど気をつけたいサインと受診の目安

公開日 監修:理事長 菅原 道仁(脳神経外科専門医)

頭痛が何日も続くと、ふと「もしかして脳腫瘍だったら……」と不安になることがあります。インターネットで調べるほど怖くなり、かえって病院に行きづらくなってしまう。そんな経験はありませんか。

最初にお伝えしたいのは、頭痛で医療機関を受診した人のうち、脳腫瘍が見つかる人はごくわずかだということです。イギリスの研究では、頭痛で身近な医療機関(かかりつけ医)を受診した人のうち、脳腫瘍が見つかったのは約1,000人に1人未満でした。頭痛のほとんどは、脳腫瘍以外の原因によるものでした。

また、万が一見つかった場合でも、脳腫瘍には良性のものが多く、種類によって経過も治療法も大きく異なります。

このコラムでは、脳腫瘍で気をつけたいサインと、検査・治療の進め方をわかりやすくご説明します。

頭痛が続き、不安な気持ちでスマートフォンで調べる40代女性のイラスト

この記事のポイント

  • 脳腫瘍にはたくさんの種類があり、日本で見つかる脳腫瘍の多くは良性です。「脳腫瘍=治らない病気」ではありません。
  • 脳腫瘍による頭痛に決まった形はありません。「日ごとに悪くなる頭痛」「頭痛に加えて手足のまひや言葉の出にくさがある」「大人になって初めてのけいれん」などは、検査で確かめることが大切です。
  • 診断の第一歩はMRIなどの画像検査です。気になる症状が続くときは、早めに確認しましょう。

脳腫瘍とはどんな病気? すべてが悪性なの?

脳腫瘍とは、頭の骨(頭蓋骨)の内側にできる「できもの(腫瘍)」をまとめた呼び名です。主に次のような種類があります。

  • 脳そのものから発生するもの
  • 脳を包む膜や神経から発生するもの
  • 体のほかの場所のがんが脳にうつってきたもの(転移性脳腫瘍)

すべてが悪性ではありません。日本全国のがん登録データ(2016〜2019年)の分析では、脳や脊髄などから発生した腫瘍でいちばん多かったのは髄膜腫(ずいまくしゅ)で、全体の約36%でした。髄膜腫は、脳を包む膜(髄膜)にできる腫瘍です。

次いで多かったのは、次の2つです。

  • 下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ):約18%。ホルモンをつくる「下垂体(かすいたい)」にできる腫瘍です。
  • 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ):約9%。聞こえやバランスをつかさどる神経などにできる腫瘍です。

これらは多くが良性で、この3つだけで全体の6割を超えます。腫瘍全体でみても、約8割が良性です。

ただし、「良性」とは「がんのように体のほかの場所へ広がらず、ゆっくり育つことが多い」という意味です。頭の骨の中はかぎられた空間です。そのため、良性の腫瘍でも大きくなったり大切な場所を圧迫したりすれば、症状が出て治療が必要になることがあります。

一方で、小さくて症状のない良性の腫瘍は、すぐに治療しないことも少なくありません。定期的な画像検査で様子をみる方法(経過観察)がとられます。

どんな症状が出るの?

脳腫瘍の症状は、大きく2つに分けられます。

① 頭の中の圧力が高まることによる症状

腫瘍が大きくなると、頭の中の圧力(脳圧)が上がり、頭痛や吐き気、嘔吐(おうと)が起こることがあります。

「脳腫瘍の頭痛は朝に強い」と紹介されることがありますが、実際の研究では、そうした典型的な形の頭痛は一部の人にしか見られません。多くの場合、脳腫瘍による頭痛は、一般的な頭痛と見分けがつきません。そのため、次のような「変化」や「ほかの症状」に注目することが大切です。

  • 日ごとに、週ごとに、だんだん悪くなっていく
  • これまでの頭痛とは明らかに違う、新しいタイプの頭痛
  • 朝起きたときや横になったときに強く、吐き気や嘔吐をともなう
  • せきやいきみで強くなる
  • 頭痛と一緒に、手足のまひ・しびれ、言葉の出にくさ、見え方の異常などがある
  • 50歳を過ぎてから始まった頭痛、がんの治療を受けたことがある方の新しい頭痛

② 腫瘍ができた場所の働きが妨げられることによる症状

脳は場所ごとに役割が分かれているため、腫瘍の場所によってさまざまな症状が出ます。手足のまひやしびれ、言葉が出にくい、視野(見える範囲)が欠ける、聞こえにくい、ふらつく、性格や様子が変わる、などです。

また、大人になって初めてけいれん発作を起こした場合は、脳腫瘍が原因のこともあるため、画像検査を含めた詳しい検査が必要です。

症状がないことも

小さな腫瘍は症状が出ないことも多く、脳ドックなどの画像検査で偶然見つかることもあります。

どのくらいの人に見つかるの?

日本で全国がん登録が始まった2016年から2019年までのデータを分析した報告では、脳や脊髄など(中枢神経系)から発生した腫瘍は、1年間に平均で約2万9千件見つかっています。これは人口10万人あたり約23人にあたります。そのうち約8割は良性の腫瘍でした。

なぜできるの?

ほとんどの脳腫瘍では、はっきりした原因はわかっていません。原因として確かめられているのは、過去に頭部へ放射線治療を受けたことや、一部の遺伝性の病気などにかぎられます。

生活習慣が原因だと確かめられたものはなく、ご自身を責める必要はありません。なお、携帯電話の電波については、世界保健機関(WHO)の依頼で行われた大規模な研究のまとめ(2024年)で、脳腫瘍が増えるという関連は確認されませんでした。

多くは予防の方法が確立していないからこそ、気になるサインに早く気づき、画像検査で確かめることが大切です。

どうやって調べて、どう治すの?

診断の第一歩は、症状をくわしくうかがい、手足の動きや感覚、目の動きなどを確かめる診察(神経の診察)と、MRIやCTなどの画像検査です。

MRI検査を受ける40代女性と、声をかける技師のイラスト

当院では、症状を丁寧にうかがったうえで画像検査を行い、腫瘍があるかどうか、場所や大きさ、おおよその性質を確認します。

腫瘍の種類を最終的に決めるには、手術などで取り出した組織を顕微鏡で調べる検査(病理検査)が必要になることがあります。

治療は、腫瘍の種類・場所・大きさ・症状によって大きく異なります。経過観察のほか、手術で取り除く治療、放射線治療、薬による治療(薬物療法)を、必要に応じて組み合わせます。治療が必要と判断された場合は、脳腫瘍の治療を専門とする病院をご紹介し、連携して診療を進めます。

まずは、症状の原因が腫瘍なのかどうかを画像検査で確かめることが第一歩です。腫瘍ではないとわかれば、本来の原因に合わせた治療に進めます。

受診の目安

  • すぐに救急車(119番)を呼んでください
    • けいれんが5分以上続く、またはけいれんをくり返し、その間に意識が戻らない
    • 突然の、これまでに経験したことのない激しい頭痛
    • 急に手足に力が入らない、顔の片側がゆがむ、言葉が出ない・ろれつが回らない
    • 呼びかけへの反応が鈍いなど、意識がおかしい
  • 当日中に医療機関を受診してください(当院の診療時間外は救急外来へ)
    • 大人になって初めてけいれん発作を起こした(治まって、ふだんどおりに戻った場合も)
    • 頭痛が急に強くなり、吐き気や嘔吐をくり返す
  • 近いうちに当院へご相談ください
    • 頭痛が日を追って悪くなっている、朝方に強い頭痛が続いている
    • これまでと違うタイプの頭痛が続いている(特に50歳以降に始まった場合や、がんの治療歴がある場合)
    • 手足のまひ・しびれ、言葉の出にくさ、視野の欠け、聞こえにくさが、少しずつ進んでいる
    • ご家族からみて、性格や様子の変化が気になる
    • 健診や脳ドックで「腫瘍の疑い」を指摘され、くわしい検査を受けたい

救急車を呼ぶか迷ったときは、救急安心センター事業「#7119」(地域により実施状況が異なります)や、お子さんの場合は小児救急電話相談「#8000」で、受診の緊急度を相談できます。明らかな意識の異常やけいれんがあれば、迷わず119番してください。

総務省消防庁ホームページ「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」

よくあるご質問

脳腫瘍の頭痛には特徴がありますか?

脳腫瘍の頭痛に決まった形はなく、一般的な頭痛と区別がつかないことが多くあります。「だんだん悪くなる」「これまでと違う」「手足のまひなどほかの症状をともなう」といった変化がある場合は、画像検査で確かめることをおすすめします。

脳腫瘍はすべて悪性ですか?

いいえ。日本の統計では、頭の中から発生する腫瘍の約6割を、髄膜腫・下垂体腺腫・神経鞘腫といった、多くが良性の腫瘍が占めています。良性で症状がなければ、経過観察となることも少なくありません。

脳ドックで脳腫瘍は見つかりますか?

脳ドックのMRI検査で、症状の出ていない小さな腫瘍が偶然見つかることがあります。見つかった場合も、多くはまず大きさや性質の評価と経過観察から始まりますので、落ち着いてご相談ください。

携帯電話をよく使うと脳腫瘍になりやすいですか?

2024年に発表された大規模な研究のまとめでは、携帯電話の使用と脳腫瘍の増加との関連は確認されていません。

脳腫瘍が疑われたら、どこで治療を受けるのですか?

治療が必要と判断された場合は、脳腫瘍の治療を専門とする病院で、手術・放射線治療・薬物療法などを組み合わせて行います。当院は診断の入り口として画像検査を行い、必要な場合は専門の病院へご紹介します。

おわりに——不安なまま検索を続けるより、一度ご相談ください

「脳腫瘍かもしれない」という不安は、調べれば調べるほど大きくなりがちです。実際には、頭痛の原因が脳腫瘍であることはまれで、見つかった場合も良性で経過観察となることが少なくありません。ひとりで不安を抱え続けるより、一度検査で確かめることが、安心への一歩になります。

医師の説明を聞いて安心した表情を見せる40代女性のイラスト

次のような方は、お気軽にご相談ください

  • だんだん悪くなる頭痛、これまでと違う頭痛が続いている
  • 大人になって初めてけいれんを起こした、まひ・しびれ・言葉の出にくさが少しずつ進んでいる
  • 「腫瘍の疑い」を指摘され、くわしい検査を受けたい

当院では、MRIによる画像検査で、気になる症状の原因を調べることができます。

「脳腫瘍かもしれない」と不安なまま過ごす毎日は、とてもつらいものです。当院では、まずお話をじっくりうかがい、必要な検査を一緒に考えます。検査で「腫瘍ではない」とわかることも、大切な診察の結果です。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。また、「最近、父の様子がいつもと違う」「母の頭痛が長引いている」など、ご家族の変化に気づいたときもご相談ください。

気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください

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