目の前がチカチカする・物が二重に見える|考えられる脳の病気と受診の目安

公開日 監修:理事長 菅原 道仁(脳神経外科専門医)

仕事中、目の前にギザギザした光が広がって、文字が読めなくなった。ふと遠くを見たら、物が二重にずれて見える。視界の片側の一部が、なんだか欠けている気がする。——そんな経験はありませんか。

目の症状は、目そのものの病気だけでなく、脳の病気のサインとして現れることがあります。代表的なのは片頭痛の前兆である閃輝暗点(せんきあんてん)ですが、なかには脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう:脳の血管にできるこぶ)や脳梗塞(のうこうそく)、下垂体(かすいたい)の腫瘍など、急いで対応すべき病気や、見逃したくない病気が隠れていることがあります。このコラムでは、目の症状から考えられる脳の病気と、受診の目安をお伝えします。

この記事のポイント

  • 目の前がチカチカ・ギザギザ光る「閃輝暗点」は、片頭痛の前兆として多い症状です
  • 「物が二重に見える」が突然起こったら、脳動脈瘤や脳梗塞のサインの可能性があります。特に、まぶたが下がる症状(眼瞼下垂)をともなう場合はすぐに受診を
  • 視野の半分が欠ける・片方の目が見えない・両目とも外側が見えにくいなどの症状も、脳が原因のことがあります
  • 突然の激しい頭痛に視野の欠けや複視をともなう場合は、救急車を

まず確認:一つでもあれば、すぐに受診を

  • 突然、物が二重に見えるようになった。特に、まぶたが下がる・片方の黒目(瞳)が大きくなっているときは、脳動脈瘤のサインのことがあり、急いで受診が必要です
  • 視野の半分が突然欠けた、片方の目が突然見えなくなった
  • 今までにない激しい頭痛に、急な視野の欠け・複視・吐き気をともなう(下垂体卒中やくも膜下出血の可能性。救急車を)
  • 目の症状に、ろれつが回らない・手足のしびれや力の入りにくさ・激しいめまいをともなう
  • チカチカする光の後に、今までに経験したことのない激しい頭痛が起こった
  • 片目が急に痛くなって見えにくく、頭痛や吐き気をともなう(急性緑内障発作の可能性。眼科の救急対応が必要です)

次の場合も、様子を見ずに早めに受診してください。

  • 50歳を過ぎて初めて、チカチカする光(閃輝暗点のような症状)が出るようになった
  • 光の症状が1時間以上続く
  • 両目とも外側が見えにくい、横から来る人や物によくぶつかるようになった

ご注意:見え方に異常があるときは、ご自身で車を運転して来院しないでください。

目の症状の原因には、どんなものがあるの?

症状 考えられる主な原因 特徴 対処の方向性
ギザギザした光が広がり、その後頭痛(閃輝暗点) 片頭痛の前兆 光は5〜60分(多くは20〜30分)で消え、その後ズキンズキンする頭痛が続く 片頭痛の診断・治療を
光だけ出て頭痛が来ない 片頭痛の前兆のみのことも、脳や目の病気のことも 特に中高年で初めて出た場合は、一過性脳虚血発作(TIA)との区別が必要 一度、検査で確認を
物が二重に見える(複視〔ふくし〕) 脳動脈瘤、脳梗塞、糖尿病による神経のまひ、重症筋無力症、甲状腺の病気など 突然の複視、まぶたが下がる、瞳が大きい場合は危険。夕方に悪化する複視は筋肉の病気のことも 急いで受診を
視野の半分が欠ける 脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など 両目で見ても、同じ側が見えない 早めにMRI検査を
両目とも外側の視野が欠ける(両耳側半盲〔りょうじそくはんもう〕) 下垂体腫瘍(かすいたいしゅよう) 脳の下にあるホルモンの司令塔「下垂体」にできた腫瘍が、視神経の交差点を圧迫して起こる。ゆっくり進むため自覚しにくく、横から来た人や車に気づきにくい・物によくぶつかる、で発見されることがある。月経不順、母乳のような分泌物、手足や顔つきの変化、疲れやすさなどホルモンの症状をともなうことも 早めにMRI検査を。手術や薬で治療できる場合が多い
突然の激しい頭痛と視野の欠け・複視(下垂体卒中〔かすいたいそっちゅう〕) 下垂体の腫瘍の中で急に出血や梗塞が起こる 今までにない激しい頭痛に、吐き気、急な視力・視野の低下、複視、まぶたの下がり、意識のもうろうをともなう。くも膜下出血と似た症状で、腫瘍があることを知らないまま起こることが多い 救急受診が必要。ホルモンの緊急補充や手術が必要になることがある
片目だけ一時的に見えなくなる 目の血管が詰まりかけるサイン(一過性黒内障〔いっかせいこくないしょう〕)など カーテンが下りるように見えなくなり、数分で戻る 脳梗塞の前ぶれのことがあり、すぐに受診を
片目が急に見えなくなったまま戻らない 網膜の血管の詰まり、50歳以上では血管の炎症(巨細胞性動脈炎)など 痛みがないことが多い。こめかみの痛みや噛むとあごが疲れる症状があれば血管の炎症を疑う 眼科・脳神経の救急受診を
黒い点や糸くず、光が見える(飛蚊症・光視症) 目(網膜など)の病気のことが多い 急に増えた、視野の端にカーテンのような影が出た場合は網膜剥離の可能性 当日中に眼科へ

関連する病気のくわしい解説

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病院ではどんな検査をするの?

診療では、症状の起こり方(突然か、繰り返しているか)、見え方(チカチカ・二重・欠け)、片目か両目か、頭痛や手足の症状の有無をうかがい、眼の動き・まぶた・瞳の大きさ・視野などを診察します。

脳が原因の可能性がある場合は、当院ではMRI・MRA(脳の血管を映す検査)で、脳梗塞や脳動脈瘤、脳腫瘍などが隠れていないかを確認します。下垂体の腫瘍が疑われる場合は、MRIに加えてホルモンの血液検査を行い、必要に応じて内分泌の専門医や脳神経外科の手術施設と連携します。目そのものの病気が考えられる場合は、眼科での検査をご案内します。脳と目、どちらの原因かを見極めることが大切です。

なお、症状が続いていて脳梗塞や脳動脈瘤による神経のまひ、下垂体卒中が強く疑われる場合は、緊急の治療が必要になることがあるため、当院ではなく最初から救急車で脳血管の治療ができる病院へ向かってください。診察の結果、緊急性が判明した場合は、連携する医療機関へ速やかにご紹介します。

受診の目安

  • すぐに119番
    • 視界の異常に、ろれつが回らない・手足の脱力・激しい頭痛・意識のもうろうをともない、続いている
    • 突然の複視に、まぶたの下がりや瞳の大きさの左右差をともなう
    • 突然の激しい頭痛に、視野の欠け・複視・意識のもうろうをともなう
  • 当日中に受診(夜間・休日なら救急外来へ)
    • 突然、物が二重に見えるようになった
    • 視野の半分が突然欠けた、片方の目が突然・一時的に見えなくなった
    • 片目が急に痛くなって見えにくい、黒い点や影が急に増えた
  • 近いうちに当院へご相談
    • チカチカする光を繰り返している、中高年になって初めて出た
    • 両目とも外側が見えにくい、横から来る人や物によくぶつかる
    • 見えづらさが続いていて、脳が原因ではないか確認したい

よくあるご質問

目がチカチカしますが、頭痛は来ません。放っておいてよいですか?

片頭痛の前兆だけが起こり、頭痛が続かないこともあります。ただし、初めて起こった場合や中高年で出るようになった場合は、一過性脳虚血発作(TIA)など脳の病気や、目の病気との区別のために一度検査をおすすめします。

物が二重に見えるときは、まず眼科に行くべきですか?

突然起こった複視や、まぶたの下がり・頭痛・手足の症状をともなう場合は、先に脳の検査(脳神経外科・脳神経内科)をおすすめします。脳動脈瘤や脳梗塞など、急いで対応すべき病気がないかを確かめることが優先だからです。

なお、片目ずつ隠してみて、片目だけでも二重に見える場合は、目そのもの(乱視・白内障・ドライアイなど)が原因のことが多く、眼科での相談が適しています。両目で見たときだけ二重で、片目を隠すと一つに見える場合は、脳や神経が原因の可能性があります。

横から来る人や車に気づきにくくなりました。目の病気でしょうか?

両目とも外側の視野が欠けている場合、脳の下にある「下垂体」の腫瘍が視神経を圧迫していることがあります。ゆっくり進むため本人は気づきにくく、物によくぶつかる・車線変更でヒヤッとした、といったきっかけで見つかることがあります。月経不順や疲れやすさなどをともなうこともあります。眼科の視野検査とあわせて、一度MRI検査で確認することをおすすめします。

閃輝暗点はどのくらい続きますか?

国際的な診断基準では5〜60分とされ、多くは20〜30分程度でおさまり、その後に頭痛が続くのが典型的です。1時間以上続く場合や、手足の症状・言葉の症状をともなう場合は、他の病気の可能性も考えて受診してください。

受診のとき、何を伝えるとよいですか?

いつから・どんな見え方か(チカチカ・二重・欠け)、片目か両目か(片目ずつ隠して確認できるとより正確です)、どのくらい続いたか、頭痛やしびれをともなったか、糖尿病・高血圧などの持病と飲んでいる薬をメモしてお持ちいただくと、診察がスムーズです。

おわりに――「目のせい」と決めつける前に

見え方の異常は、つい「目の疲れ」「老眼のせい」と考えてしまいがちです。しかし、目の症状の裏に脳の病気が隠れているかどうかは、診察と検査で確かめることができます。特に「突然の複視」と「まぶたの下がり」の組み合わせ、そして「突然の激しい頭痛」と「視野の欠け」の組み合わせは、放置してはいけないサインです。

次のような方は、一度当院へご相談ください。

  • 目の前がチカチカする症状を繰り返している
  • 物が二重に見えることがある
  • 視野の欠けや、一時的に見えなくなった経験がある
  • 両目とも外側が見えにくい、物によくぶつかるようになった
  • 一度、MRIで脳と血管の状態を確認しておきたい

気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください

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