未破裂脳動脈瘤とは?脳ドックで見つかったらどうすればいいの?
脳ドックの結果に「脳動脈瘤の疑い」と書かれていた。医師から「脳の血管にこぶがあります」と告げられた――そのとき、頭が真っ白になり、「いつ破裂するのか」「手術しなければいけないのか」と、不安で眠れなくなった方は少なくありません。
まず、お伝えしたいことがあります。未破裂脳動脈瘤(みはれつ・のうどうみゃくりゅう)は、決してめずらしいものではなく、その多くはすぐに破裂するものではありません。そして、見つかったからこそ、破裂を防ぐための対策を「選べる」ようになります。
このコラムでは、未破裂脳動脈瘤とは何か、破裂の確率、見つかったあとの選択肢、そして受診の目安を、できるだけわかりやすくお伝えします。
この記事のポイント
- 未破裂脳動脈瘤は、成人のおよそ3%(100人に3人程度)にあるとされ、めずらしいものではありません
- 破裂する確率は、動脈瘤全体で見ると年間およそ1%です。ただし、大きさ・形・場所によって大きく異なります
- 見つかっても、すぐに治療が必要とは限りません。「経過観察」か「予防的な治療」かを、脳神経外科の専門医と相談して決めます
未破裂脳動脈瘤とは
脳動脈瘤は、脳の血管の壁の一部が風船のようにふくらんで、こぶになったものです。脳の血管が枝分かれする部分にできやすく、ふくらんだ部分の壁は正常な血管より薄くなっています。
破裂していない間は、ほとんど症状がありません。そのため自分で気づくことはできず、脳ドックや、頭痛・めまいなど別の目的で行ったMRI検査で偶然見つかることが大半です。
症状が出る場合
まれに、動脈瘤が大きくなって近くの神経を圧迫し、次のような症状が出ることがあります。
- 片方のまぶたが急に下がってきた
- ものが二重に見える
- 片方の目の奥や、目の周りが痛む
特に「まぶたが下がる」「ものが二重に見える」は、動脈瘤が急に大きくなっているサインのことがあり、破裂が近い可能性もあるため、すぐに受診が必要です。
破裂すると「くも膜下出血」に
動脈瘤が破裂すると、脳を包む膜(くも膜)の内側に出血する「くも膜下出血」を起こします。「今までに経験したことのない、突然の激しい頭痛」で発症し、命に関わる病気です。助かった場合も後遺症が残ることが少なくありません。破裂する前に見つけ、対策を考えられることが、未破裂脳動脈瘤を「知る」ことの大きな意味です。
どのくらいの人が持っているの?
世界の調査をまとめた研究では、成人のおよそ3%に未破裂脳動脈瘤があると推計されています。日本の脳ドックの調査でも、受診者の数%に見つかると報告されており、「100人に3人程度」という身近なものです。
40〜60代で見つかることが多く、女性にやや多い傾向があります。
次のような方は、動脈瘤が見つかる確率が高いことが知られています。
- 血のつながった家族(親・きょうだい・子)に、くも膜下出血や脳動脈瘤の方がいる
- 多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)という腎臓の病気がある
- 高血圧、喫煙習慣がある
破裂する確率はどのくらい?
日本で約6,000個の未破裂脳動脈瘤を追跡した大規模な研究(UCAS Japan)では、破裂する確率は全体で年間約1%でした。つまり、100人の方が1年間経過を見た場合、およそ99人は破裂しないということです。
ただし、この数字は「平均」であり、動脈瘤の大きさ・形・場所によって大きく異なります。
大きさ
同じ研究では、5mm未満の小さな動脈瘤の破裂率は年間0.5%以下でしたが、7〜9mmでは約1.7%、10mm以上では年間4%を超え、25mm以上では年間30%を超えていました。大きいほど破裂しやすいことがはっきりしています。
形
こぶの表面に小さな「でっぱり(ブレブ、娘動脈瘤)」があるもの、形がいびつなものは、なめらかな形のものより破裂しやすいとされています。
場所
脳の血管のうち、「前交通動脈」や「内頸動脈-後交通動脈分岐部」にできたものは、他の場所より破裂しやすいことがわかっています。
そのほか
経過観察中に大きくなってきたもの、動脈瘤が複数あるもの、過去にくも膜下出血を起こしたことがある方、喫煙、高血圧なども、破裂リスクを高めます。
これらの要因を総合して、お一人おひとりの「破裂しやすさ」を評価します。
未破裂脳動脈瘤の原因について
脳動脈瘤ができるはっきりした原因は、まだ完全にはわかっていません。血管が枝分かれする部分は血流の負担がかかりやすく、そこに長年の血圧の負荷や血管壁の弱さが重なって、少しずつふくらんでいくと考えられています。
高血圧・喫煙・多量の飲酒は、動脈瘤ができること、大きくなること、破裂することのすべてにおいてリスクを高めることがわかっています。
また、血のつながった家族にくも膜下出血や脳動脈瘤の方が複数いる場合は、遺伝的な体質が関係していると考えられます。
見つかったらどうするの?(治療の選択肢)
未破裂脳動脈瘤が見つかっても、すぐに治療が必要になるとは限りません。方針は大きく2つに分かれ、脳神経外科の専門医と相談して決めていきます。
1. 経過観察
小さく、破裂リスクが低いと判断された場合は、定期的にMRI・MRA検査(脳の血管を映すMRI検査)を行い、大きさや形に変化がないかを確認していきます。あわせて、血圧の管理や禁煙など、破裂リスクを下げる生活の見直しを行います。
検査の間隔は、診断直後は3ヶ月から半年後、その後は半年から一年程度が一般的ですが、動脈瘤の状態によって医師が判断します。長期間変化がなくても、定期検査は続けることが勧められています。
2. 予防的な治療
次のような場合には、破裂を防ぐための治療が検討されます。
- 大きさが5〜7mm以上
- 5mm未満でも、症状がある、破裂しやすい場所にある、形がいびつ、経過観察中に大きくなった、比較的若い方、など
治療には、主に次の方法があります。
クリッピング術
頭の骨の一部を開け、動脈瘤の根元を小さな金属のクリップで留めて、血液が入らないようにする手術です。長年行われてきた確実性の高い治療で、一度治療すると再発が少ないのが特徴です。
コイル塞栓術(そくせんじゅつ)
足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を脳の血管まで進め、動脈瘤の中にやわらかい金属の糸(コイル)を詰めて、血液が入らないようにする治療です。頭を開けずに済むため体への負担が少ない一方、動脈瘤の形によっては向かない場合や、後に再治療が必要になる場合があります。
フローダイバーター(特殊なステント)
大きな動脈瘤などに対して、動脈瘤の入り口に目の細かい筒状の器具を置き、血液の流れを変えて動脈瘤を小さくしていく治療です。
治療のリスクについて
どの治療にも、脳梗塞や出血などの合併症のリスクがゼロではなく、日本の調査では数%程度と報告されています。「破裂のリスク」と「治療のリスク」を天秤にかけ、年齢や持病、ご本人の考え方も含めて、じっくり相談して決めることが大切です。「治療をしない」という選択も、きちんと経過を見ていれば、十分に正しい選択です。
破裂を予防するための生活
未破裂脳動脈瘤と診断されたら、経過観察の方も、治療を受けた方も、次のことを心がけてください。
- 血圧の管理:高血圧は破裂リスクを高めます。塩分を控え、処方された血圧の薬はきちんと飲みましょう。家庭で血圧を測る習慣も役立ちます
- 禁煙:喫煙は、動脈瘤ができること・大きくなること・破裂することのすべてのリスクを高めます。動脈瘤が見つかったことを機に、ぜひ禁煙に取り組んでください。禁煙外来の利用もご相談ください
- お酒は控えめに:多量の飲酒はリスクを高めます
- 定期検査を続ける:決められた間隔での検査を忘れずに受け、変化を見逃さないことが何より大切です
一方で、「運動をしてはいけない」「力仕事はだめ」といった一律の制限は必要ありません。適度な運動はむしろ血圧管理に役立ちます。ただし、いきむような激しい運動や、極端に血圧が上がる行動については、医師にご相談ください。
未破裂脳動脈瘤との向き合い方
脳ドックで「動脈瘤があります」と言われると、大きなショックを受ける方がほとんどです。「頭の中に爆弾を抱えている」と感じ、不安で日常生活が手につかなくなる方もいらっしゃいます。
しかし、繰り返しになりますが、未破裂脳動脈瘤の多くはすぐに破裂するものではありません。過度に恐れて生活を制限する必要はなく、「正しく知って、正しく備える」ことが大切です。
大切なのは、放置しないことです。破裂してくも膜下出血になってからでは、選択肢は大きく限られます。未破裂のうちに見つかったことを、「対策を選べるチャンス」として前向きにとらえ、専門医とともに、ご自身に合った方針を決めていきましょう。
不安な気持ちが強く続く場合は、それもぜひ診察時にお話しください。不安そのものへの対処も、治療です。
受診の目安
- 脳ドックや他の医療機関の検査で「脳動脈瘤の疑い」を指摘された → 精密検査や、経過観察・治療方針のご相談ができます
- 未破裂脳動脈瘤の経過観察中だが、しばらく検査を受けていない → 検査の再開をご相談ください
- 血のつながった家族に、くも膜下出血や脳動脈瘤になった方が2人以上いる → 脳血管の検査を検討する価値があります。ご相談ください
次の場合は、すぐに受診してください。
- 片方のまぶたが急に下がってきた、ものが二重に見えるようになった
次の場合は、破裂(くも膜下出血)の可能性があります。ためらわず救急車を呼んでください。
- 今までに経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 激しい頭痛とともに、嘔吐、意識がもうろうとする、けいれん
よくあるご質問
未破裂脳動脈瘤は必ず破裂しますか?
いいえ。破裂する確率は動脈瘤全体で見ると年間約1%で、多くの方は破裂しないまま経過します。ただし、大きさや形、場所によってリスクは大きく異なるため、専門医による評価と定期的な検査が大切です。
見つかったら必ず手術が必要ですか?
いいえ。小さくてリスクが低いものは、経過観察が基本です。破裂リスクが高いと判断された場合に、予防的な治療を検討します。治療をするかどうかは、破裂のリスクと治療のリスクを比べ、ご本人の考えも含めて一緒に決めていきます。
経過観察はどのくらいの間隔で検査しますか?
診断後は半年後に一度、その後は年1回程度、MRI・MRA検査で変化を確認するのが一般的です。動脈瘤の状態によって間隔は変わりますので、医師の指示に従って定期検査を続けましょう。
脳ドックで脳動脈瘤は見つけられますか?
脳ドックで行うMRA検査(脳の血管を映すMRI検査)は、未破裂脳動脈瘤を見つけるのに有用な検査です。ただし、2〜3mm以下のごく小さな動脈瘤は、MRAでは判別が難しいこともあります。「疑い」とされた場合は、より詳しい検査(造影CTやカテーテル検査など)で確認することがあります。
経過観察中、飛行機に乗ったり、運動したりしても大丈夫ですか?
一般的な日常生活や旅行、適度な運動に制限は必要ありません。血圧を大きく上げるような激しい運動やいきむ動作については、動脈瘤の状態に応じて医師にご相談ください。
動脈瘤があることで、頭痛やめまいは起こりますか?
未破裂の動脈瘤そのものが、慢性的な頭痛やめまいの原因になることは、通常ありません。脳ドックのきっかけになった頭痛やめまいは、多くの場合、動脈瘤とは別の原因によるものです。ただし、いつもと違う突然の激しい頭痛は別ですので、すぐに受診してください。
おわりに――「見つかった」ことは、備えるチャンスです
「脳動脈瘤」という言葉の重さに、不安でいっぱいになるお気持ちは当然です。けれども、症状のないうちに見つかった動脈瘤は、破裂を防ぐために「今、何ができるか」を考えられる状態にあります。
当院では、脳ドックや他の医療機関で動脈瘤を指摘された方の精密検査、経過観察、生活面のご相談を行っています。治療が必要と判断される場合は、脳血管の治療を専門とする医療機関と連携し、適切な治療につなげます。
「どのくらい心配すべきなのか知りたい」「セカンドオピニオンを聞きたい」「経過観察を途中でやめてしまった」など、心配なことがあればどうぞお気軽にご相談ください。
「動脈瘤があると言われて、どのくらい心配すればいいのかわからない」
そのお気持ちは、とても自然なものです。同じ「動脈瘤」でも、大きさや形、場所によって、心配の度合いはまったく違います。
当院では、検査画像をもとに、あなたの動脈瘤の「破裂しやすさ」と「今できること」を、わかりやすくご説明します。他院で指摘された方、セカンドオピニオンをご希望の方もご相談ください。
※ 他院の検査結果・画像データ(CD-Rなど)をお持ちの方は、ご持参ください。
次のような方は、一度ご相談ください。
- 脳ドックで「動脈瘤の疑い」と言われたが、そのままにしている
- 以前は経過観察していたが、しばらく検査を受けていない
- 血圧が高めで、動脈瘤も指摘されている
- 血のつながった家族に、くも膜下出血や脳動脈瘤の方が複数いる
未破裂脳動脈瘤は、「見つかったあと、きちんと見続ける」ことが何より大切です。
参考文献
- 脳卒中治療ガイドライン 改訂2025
- 脳ドックのガイドライン2026. 中外医学社
- UCAS Japan Investigators; Morita A, Kirino T, Hashi K, et al. (2012). The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. New England Journal of Medicine, 366(26), 2474-2482. DOI: 10.1056/NEJMoa1113260
- Sonobe M, Yamazaki T, Yonekura M, Kikuchi H (2010). Small unruptured intracranial aneurysm verification study: SUAVe study, Japan. Stroke, 41(9), 1969-1977.
- Wiebers DO, Whisnant JP, Huston J 3rd, et al. (International Study of Unruptured Intracranial Aneurysms Investigators) (2003). Unruptured intracranial aneurysms: natural history, clinical outcome, and risks of surgical and endovascular treatment. Lancet, 362(9378), 103-110.
- Vlak MH, Algra A, Brandenburg R, Rinkel GJ (2011). Prevalence of unruptured intracranial aneurysms, with emphasis on sex, age, comorbidity, country, and time period: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurology, 10(7), 626-636.
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