一過性脳虚血発作(TIA)とは?「すぐ治った」が一番危ない理由
さっきまで片方の手に力が入らなかったのに、いまはもう普通に動く。ろれつが回らなかったのは、疲れのせいだったのかもしれない——。そんな症状は、実は要注意なんです。
それは、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ・TIA)かもしれません。一過性脳虚血発作(TIA)は「脳梗塞の警報」とも呼ばれる発作で、症状が消えたあとの数日間こそが、実はもっとも注意が必要な時間帯です。このコラムでは、なぜ「すぐ治った」が一番危ないのか、そしてどう行動すればよいのかをお伝えします。
この記事のポイント
- 脳梗塞と同じ症状が、数分〜数十分で消えてしまうのがTIAです。消えても「治った」わけではありません
- TIAのあと脳梗塞を起こす危険は発作直後がもっとも高く、治療をしなかった場合、90日以内に約1割の方が脳梗塞になり、その半数近くは最初の2日以内に起こります
- TIAの段階ですぐに治療を始めると、その後の脳梗塞の危険を大きく下げられます。症状が消えていても、その日のうちに受診してください
一過性脳虚血発作(TIA)とはどんな病気?
TIAは、脳の血管が一時的に詰まりかけて、脳梗塞と同じ症状が出る発作です。片方の手足に力が入らない、片方の手足や顔がしびれる、ろれつが回らない、言葉が出ない、片方の目が一時的に見えなくなる——こうした症状が突然起こります。
脳梗塞と違うのは、症状が短時間で完全に消えてしまうことです。多くは数分から1時間以内、長くても24時間以内に症状がなくなります。
症状が消えるのは、詰まりかけた血管の血流が、たまたま再開したためです。しかし、血管が詰まりかけたという事実は消えていません。同じ場所が本格的に詰まれば、そのまま脳梗塞になります。
TIAのあと、脳梗塞になる確率はどのくらい?
治療を受けなかった場合、TIAを起こした方の約1割が90日以内に脳梗塞を発症し、その半数近くは発作から2日以内に起こる、と報告されています。つまり、「症状が消えた直後の数日間」がもっとも危険です。
「疲れのせいと思いたい」という気持ちはよく分かります。しかし、ここで様子を見てしまうことが、取り返しのつかない結果につながりかねません。
一方で、TIAの直後に原因を調べ、すぐに治療を始めた場合には、その後の脳梗塞が大きく減ることが分かっています。海外の研究では、受診後すぐに治療を始めることで、90日以内の脳梗塞が約8割減ったという結果も報告されています。近年は、迅速な治療を受けた方の90日以内の脳梗塞発症は数%程度にとどまるという報告もあります。
TIAは、最初の脳梗塞を予防することができる、大切なチャンスとも言えます。
なぜ起こるの?
TIAの原因は、脳梗塞と共通しています。大きく2つあります。
1つは動脈硬化です。脳の血管や、首の血管(頸動脈・けいどうみゃく)が動脈硬化で細くなったり、血管の内側にできたコレステロールのかたまり(プラーク)の一部がはがれて流れ、脳の血管を一時的に詰まらせたりします。高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)・喫煙が背景になります。
もう1つは心臓です。心房細動(しんぼうさいどう・脈が不規則に乱れる不整脈)があると、心臓の中に血のかたまり(血栓)ができやすくなり、それが流れて脳の血管を詰まらせます。心房細動は自覚症状がないことも多く、TIAをきっかけに初めて見つかる方もいます。
どちらが原因かによって、その後の予防の薬が変わります。だからこそ、TIAを起こしたときは「原因探し」の検査がとても重要になります。
どんな検査と治療をするの?
MRI検査で脳梗塞が起こっていないかを確認し、MRA検査(脳の血管を映すMRI)や頸動脈エコー検査で血管の状態を、心電図で心房細動の有無を調べます。心房細動は検査の瞬間に出ていないこともあるため、必要に応じて長時間の心電図検査を行うこともあります。
治療の中心は、脳梗塞を防ぐための薬です。動脈硬化が原因の場合は血小板の働きを抑える薬(抗血小板薬)、心房細動が原因の場合は血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を使います。あわせて、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの危険因子の治療を行います。
頸動脈の狭窄が高度な場合など、手術やカテーテル治療が必要と判断される場合には、脳血管の治療を専門とする医療機関と連携してご紹介します。当院はその後の経過観察と再発予防を担当し、切れ目なくサポートします。
これって受診すべき?——緊急度の目安
- すぐに119番
- 片方の手足の脱力・しびれ、ろれつの回りにくさ、片目の見えにくさがいまも続いている(脳梗塞の可能性。一刻を争います)
- 上記の症状が、数時間以内に出て消えた(症状が消えていても、救急車を呼んで構いません)
- 当日中に受診
- 上記の症状が出たが、数分〜数十分で消えた(TIAの疑い。「治った」ではなく「いったん血流が戻っただけ」です。夜間・休日なら救急外来へ)
- ここ数日のうちに、同じような発作があった
- 近いうちに当院へご相談
- 過去に同じような発作があったが、受診しないままになっている
- 心房細動・頸動脈の動脈硬化・高血圧を指摘されていて、脳の血管を調べたことがない
救急車を呼ぶべきか迷ったときは、救急安心センター事業「#7119」に電話で相談することもできます(※お住まいの地域によっては利用できない場合があります)。
総務省消防庁ホームページ「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」
よくあるご質問
症状が完全に消えたのに、本当に受診が必要ですか?
必要です。TIAのあとの脳梗塞は、最初の2日以内に起こることがもっとも多く、症状が消えた直後こそ注意が必要な時間帯です。その日のうちに受診してください。夜間であれば救急外来の受診をためらわないでください。
TIAと脳梗塞はどう違うのですか?
症状は同じで、違いは「短時間で消えるかどうか」です。ただし、症状が消えていてもMRIで小さな脳梗塞が見つかることがあり、その場合は脳梗塞として治療します。TIAと脳梗塞は、連続した一つの病気と考えられています。
どんな検査をしますか?
MRIで脳の状態を、MRA・頸動脈エコーで血管の状態を、心電図で心房細動の有無を調べます。原因(動脈硬化か、心臓か)によって予防の薬が変わるため、原因を特定することが治療の第一歩です。
TIAは予防できますか?
はい、予防することができます。血圧・血糖・コレステロールの管理、禁煙、そして心房細動のチェックが柱です。症状が出る前に血管の状態を確認しておくことも、備えの一つになります。
おわりに――「何もなかった」で終わらせないために
TIAのいちばんやっかいなところは、症状が消えてしまうために「気のせいだった」と自己判断しやすいことです。しかし、数分で治った脱力やろれつの回りにくさは、脳からの重大な警報です。この警報を活かせるかどうかで、その後の毎日が大きく変わることがあります。
次のうち、1つでも当てはまる方はご相談ください
- 片方の手足の脱力やしびれが出て、すぐ消えたことがある
- ろれつが回らない・言葉が出ない瞬間があった
- 片目が数分間見えなくなったことがある
- 心房細動や頸動脈の動脈硬化を指摘されている
参考文献
- 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン 改訂2025」
- 日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2026」中外医学社
- 公益社団法人日本脳卒中協会 https://www.jsa-web.org/
気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください
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赤坂
菅原クリニック 東京脳ドック
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- 月〜土 9:00〜17:00(日・祝休診)
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菅原脳神経外科クリニック
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