高血圧・動脈硬化と脳の病気|生活習慣病が脳の血管を傷つける仕組みと、今日からできる対策
健診で「血圧が高めですね」と言われた。でも、どこも痛くないし、忙しいし、まあいいか——。そう思って、健診結果を引き出しにしまったままにしていませんか。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、そして血管性認知症。こうした脳の病気は、ある日突然起こるように見えます。けれども実際には、その何年も前から、高血圧や動脈硬化によって脳の血管が少しずつ傷んでいることが少なくありません。逆にいえば、血圧を管理して動脈硬化の進行をおさえることは、脳の病気を防ぐためにとても大切な対策です。
このコラムでは、生活習慣病が脳の血管を傷つけていく仕組みと、今日からできる対策をお伝えします。

この記事のポイント
- 高血圧は、ほとんど症状がないまま脳の血管を傷めていきます
- 動脈硬化が進むと、脳梗塞・脳出血・血管性認知症などにつながります
- 脳を守る基本は「血圧の管理」「減塩」「禁煙」です。気になる方は、脳ドックで血管の状態を確認する方法もあります
なぜ高血圧は脳によくないの?
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。血圧が高い状態が続くと、体のさまざまな血管には毎日強い力がかかり続けます。

太い血管では、傷ついた壁にコレステロールなどがたまって「こぶ(プラーク)」ができ、血液の通り道が狭くなります。細い血管では、壁そのものが厚く硬くなり、もろくなっていきます。このように血管が「硬く・狭く・もろく」なった状態を、まとめて動脈硬化と呼びます。
高血圧のやっかいなところは、ほとんど症状がないことです。多くの方は「何ともない」まま何年も過ごします。その間にも血管の傷みは少しずつ進むため、高血圧は「サイレントキラー(静かに進む病気)」とも呼ばれます。痛くもかゆくもないのに治療をすすめられるのは、このためです。
動脈硬化は、どんな脳の病気につながるの?
脳血管が詰まる——脳梗塞
狭くなった脳の血管に血のかたまり(血栓)が詰まったり、首の血管(頸動脈:けいどうみゃく)にできたプラークから血のかたまりがはがれて脳へ流れたりして起こります。また、高血圧は心房細動(しんぼうさいどう:脈が不規則になる不整脈)の原因の一つでもあります。心房細動があると心臓の中に血のかたまりができやすく、それが脳の血管を詰まらせることもあります。
脳梗塞は再発しやすい病気です。福岡県久山町で行われた長期の調査では、脳梗塞を起こした方のうち、5年以内に約3人に1人、10年以内に約半数が再び脳卒中を起こしていました。この調査は治療法が今ほど進んでいなかった時期のデータで、最近の海外の調査ではこれより低い再発率が報告されています。それでも、再発を防ぐための治療と生活習慣の見直しは欠かせません。
脳血管が破れる——脳出血・くも膜下出血
高血圧で傷んでもろくなった脳の細い血管が破れて出血するのが、脳出血です。高血圧は、脳出血を起こすもっとも重要な要因です。また高血圧は、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤:のうどうみゃくりゅう)が破れて起こる、くも膜下出血の危険も高めます。
傷みが積み重なる——もの忘れや歩きにくさ
脳の細い血管の傷みが重なると、症状の出ない小さな脳梗塞(かくれ脳梗塞)や、脳の奥の神経の通り道が傷む「白質病変(はくしつびょうへん)」が増えていきます。これらは、もの忘れや歩くときのふらつきにつながることがあります。脳梗塞や脳出血のあとに起こる血管性認知症も、血管の傷みが背景にあります。
動脈硬化を進めるものは何?
高血圧に加えて、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)、喫煙、お酒の飲みすぎ、肥満、運動不足は、どれも動脈硬化を進める要因です。これらがいくつも重なるほど、脳の病気の危険は大きく高まります。
年齢や家族歴(血縁の方に脳卒中の人がいるなど)も影響しますが、これらは変えられません。変えられる要因——血圧・血糖・コレステロール・タバコ・お酒・運動——に取り組むことが、脳を守るいちばん現実的な方法です。
脳を守るために、今日からできること

① 自分の血圧を知る
家庭用の血圧計で、毎日同じ条件で測る習慣をつけましょう。
- 朝:起きてから1時間以内、トイレを済ませたあと、朝食や薬の前
- 夜:寝る前
- どちらも、いすに座って1〜2分落ち着いてから測ります
家庭で測った血圧が135/85mmHg以上の日が続くようなら、受診をおすすめします。治療中の方の目標は、家庭血圧で125/75mmHg未満が基本ですが、年齢や持病、体調によって一人ひとり調整します。
② 塩分をひかえる
高血圧の方の減塩の目標は、1日6g未満です(日本高血圧学会)。高血圧でない方も、男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満が目標とされています(厚生労働省)。日本人の平均は1日約10gなので、少しずつ減らしていきましょう。
- 麺類の汁は残す
- 漬物・ハム・練り物などの加工食品をひかえる
- しょうゆやソースは「かける」より「つける」
野菜や果物に多いカリウムには、体から塩分を出しやすくするはたらきがあります。ただし、腎臓の病気がある方はカリウムを制限する必要がある場合があります。また果物は糖分も多いので、食べすぎには気をつけましょう。持病のある方は医師にご相談ください。
③ タバコをやめる
タバコは動脈硬化を強く進めます。禁煙は、脳の病気を防ぐうえで効果の大きい対策の一つです。自力でやめるのが難しい方には禁煙外来という選択肢もあり、条件を満たせば保険で治療を受けられます。周りの人が吸う煙(受動喫煙)も体に影響します。
④ お酒は量を決めて
お酒は血圧を上げます。厚生労働省は、1日に飲む純アルコールの量が男性で40g以上、女性で20g以上になると、生活習慣病の危険が高まるとしています(ビール中びん1本〈500ml〉で約20g)。お酒を飲まない方が、健康のために飲み始める必要はありません。
⑤ 体を動かす
ウォーキングなど、少し息がはずむくらいの運動を、できれば毎日合計30分ほど続けましょう。10分ずつに分けても大丈夫です。心臓や足腰に持病がある方は、始める前に医師にご相談ください。
すべてを完璧にやる必要はありません。できることから一つずつで十分です。
⑥ 薬は自分の判断でやめない
すでに血圧の薬などを飲んでいる方は、自分の判断でやめないことが大切です。「調子がいいから」とやめると、血圧はまた上がり、血管の傷みが再び進んでしまいます。
脳ドックでは何が分かるの?
高血圧や動脈硬化が脳にどれだけ影響しているかは、外からは分かりません。脳ドックでは、MRI(磁気を使って脳の断面を撮影する検査)とMRA(同じ装置で脳の血管を映し出す検査)により、かくれ脳梗塞、白質病変、脳動脈瘤、血管の狭くなっている部分など、症状が出る前の変化を確認できます。放射線は使いません。
高血圧・糖尿病・脂質異常症がある方、タバコを吸う(吸っていた)方、血縁の方に脳卒中になった人がいる方は、ご自身の脳と血管の状態を一度確認しておくことを検討してみてください。
脳ドックを受ける前に知っておいていただきたいこと
- 何かが見つかっても、すぐに治療が必要とは限りません。多くは経過をみたり、生活習慣を見直したりして対応します
- 異常がなくても、将来まったく病気にならないという保証にはなりません。検査のあとも血圧の管理は続けましょう
- ペースメーカーなど体の中に金属がある方や、狭い場所が苦手な方は、検査を受けられない場合があります。事前にご相談ください
受診の目安
- すぐに救急車(119番)を呼んでください
次の症状が突然起こったときは、脳卒中の可能性があります。- 顔の片側がゆがむ、片方の手足に力が入らない・しびれる
- ろれつが回らない、言葉が出ない、言われたことが理解できない
- 片方の目が見えにくい、視野の一部が欠ける、物が二重に見える
- 急なめまいやふらつきで、立てない・歩けない
- 今までに経験したことのない、激しい頭痛
症状が始まった時刻を確認しておきましょう。脳梗塞の治療は、発症から早いほど選べる方法が多くなります。
- 症状がすぐにおさまっても、様子を見ずにすぐ受診してください
上のような症状が数分〜数十分で消えた場合、「一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)」の可能性があります。脳の血流が一時的に止まった状態で、脳梗塞の前ぶれです。このあと数日のうちに脳梗塞を起こす危険が高いため、その日の夜や翌日まで待たず、すぐに脳の診療ができる医療機関や救急外来を受診してください。迷うときは119番に電話してください。 - 近いうちに当院へご相談ください
- 健診で高血圧・糖尿病・脂質異常症を指摘されたが、そのままにしている
- 家庭血圧で135/85mmHg以上の日が続いている
- 治療中だが、血圧がなかなか目標まで下がらない
- 生活習慣病があり、脳や血管の状態を一度確認しておきたい(脳ドックのご相談も承ります)
救急車を呼ぶか迷ったときは、救急安心センター事業「#7119」(地域により実施状況が異なります)や、お子さんの場合は小児救急電話相談「#8000」で、受診の緊急度を相談できます。明らかな意識の異常やけいれんがあれば、迷わず119番してください。
総務省消防庁ホームページ「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」
よくあるご質問
血圧が高くても、症状がなければ大丈夫では?
症状がないことこそが、高血圧の注意すべき点です。自覚のないまま脳の血管の傷みは進み、脳梗塞や脳出血として初めて気づくこともあります。症状が出る前から管理を始めることが大切です。
薬を飲み始めたら、一生やめられないのですか?
減量や減塩、運動などで血圧が安定すれば、医師の判断で薬を減らしたり、やめたりできる場合もあります。ただし、自分の判断でやめると血圧が再び上がり、血管の傷みが進んでしまいます。必ず医師と相談しながら調整しましょう。
動脈硬化は元に戻りますか?
進んでしまった動脈硬化を元どおりにすることは難しいのが現状です。それでも、血圧・コレステロール・血糖の管理や禁煙によって進行をおさえ、脳梗塞などの危険を下げられることが、多くの研究で確かめられています。何歳から始めても、遅すぎることはありません。
自分の脳の血管の状態を知る方法はありますか?
脳ドックのMRI・MRA検査で、かくれ脳梗塞や脳動脈瘤、血管の狭い部分などを確認できます。脳ドックは自由診療(保険適用外)です。検査の内容や費用は、お気軽にお問い合わせください。脳ドックのご案内はこちら
おわりに——健診結果を、引き出しから出すところから
高血圧や動脈硬化の管理は地味で、成果も目に見えにくいものです。けれどもそれは、10年後、20年後のご自身の脳だけではなく、全身を守るための、大切な積み重ねです。
当院の生活習慣病・動脈硬化外来では、血圧・コレステロール・血糖の管理から、脳ドックによる血管のチェックまで、「脳を守る」という視点で一緒に取り組んでいきます。
こんな方は、一度ご相談ください
- 健診で血圧・血糖・コレステロールの異常を指摘されたまま、そのままにしている
- 家庭血圧が135/85mmHgを超える日が続いている
- 血縁の方に脳卒中になった人がいて、自分の血管の状態が気になる
健診結果、引き出しに入ったままになっていませんか?
結果の用紙を持ってきていただくだけで大丈夫です。数値が何を意味するのか、これから何をすればよいのかを、一緒に確認しましょう。「こんなことで受診していいのかな」という段階でのご相談も歓迎しています。
参考文献
- 日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン作成委員会 編.『高血圧管理・治療ガイドライン2025』 https://www.jpnsh.jp/guideline.html
- 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編.『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』協和企画. https://www.kk-kyowa.co.jp/stroke2021/
気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください
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菅原クリニック 東京脳ドック
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