片頭痛とは?前兆・原因・予防治療の選択肢までわかりやすく解説
こめかみのあたりがズキンズキンと脈打つように痛む。動くと痛みがひどくなって、吐き気で何も手につかない。光や音がやけにつらく感じる――そんな頭痛に悩まされていませんか。
それは「片頭痛(へんずつう)」かもしれません。片頭痛は「ただの頭痛」と思われがちですが、痛みが強いと寝込んでしまうこともあり、仕事や学校、家事に大きな影響が出る病気です。
一方で、片頭痛の治療はこの数年で大きく進歩しました。発作を抑える薬に加え、頭痛の回数そのものを減らす予防薬の選択肢が増えています。このコラムでは、片頭痛の特徴・原因・治療と、受診の目安をわかりやすくお伝えします。

この記事のポイント
- 日本では15歳以上の約8%が片頭痛を抱えており、20〜40代の女性に特に多く、女性は男性の3倍以上です
- 痛みが強いと寝込んでしまうこともあり、仕事や学校など社会生活に影響が出やすい頭痛です
- 発作時の薬(トリプタンなど)と予防の薬(飲み薬・注射)があり、ご自身に合った治療を見つけることで、頭痛の回数や強さが軽くなることが期待できます
片頭痛の特徴
片頭痛は、こめかみや目のまわりが脈打つようにズキンズキンと痛む頭痛です。頭の片側に起こることが多いですが、両側が痛む方も4割ほどいます。痛みは中等度から強く、階段の上り下りや歩くといった日常の動作で悪化するのが特徴です。そのため、痛みが強いときは横になって休まざるを得ず、職場や学校を休むことになる方も少なくありません。
痛みに加えて、次のような症状を伴います。
- 吐き気や嘔吐
- 光や音がつらく感じる(暗く静かな部屋にいたくなる)
- においに敏感になる
治療をしない場合、発作は4時間から3日ほど続きます。眠ると楽になることもあります。
「前兆」と「予兆」について
片頭痛のある方の2〜3割では、頭痛が始まる前に、目の前にギザギザした光がチカチカと見える「閃輝暗点(せんきあんてん)」や、視野の一部が見えにくくなる症状が出ます。これを「前兆(ぜんちょう)」と呼び、通常5〜60分ほど続いたあとに頭痛が始まります。まれに、手足のしびれや言葉が出にくくなる前兆もあります。

これとは別に、頭痛の数時間〜1日前に、あくび、眠気、首こり、気分の変化、特定の食べ物が無性に食べたくなる、などの「予兆(よちょう)」を感じる方もいます。予兆に気づけると、早めの対処に役立ちます。
片頭痛はどのくらいの人が経験するの?
日本の全国調査では、15歳以上の8.4%に片頭痛があると報告されています。女性が12.9%、男性が3.6%と、女性は男性の3倍以上です。世界的にも、成人のおよそ14%が片頭痛を抱えていると推計されています。
多くは思春期以降に発症し、20〜40代の女性にもっとも多くみられます。女性に多い理由として、女性ホルモン(エストロゲン)の変動が関係していると考えられており、生理の前後に発作が起こりやすい方も多くいらっしゃいます。
子どもの片頭痛も珍しくありません。子どもの場合は、頭の両側が痛む、発作が短い(2時間程度のことも)、お腹の痛みやめまいや乗り物酔いが目立つなど、大人と違う出方をするため、見逃されやすい点に注意が必要です。
50代以降になると、閉経後の女性を中心に、片頭痛は軽くなっていく傾向があります。
片頭痛の原因について
片頭痛の原因は、まだ完全には解明されていません。ただし、この20年ほどで研究が大きく進み、脳の神経と血管の働きが深く関わっていることがわかってきました。
遺伝的な体質
親に片頭痛があると子どもも片頭痛になりやすいことから、遺伝的な体質が関係すると考えられています。「片頭痛になりやすい脳」を持って生まれ、そこにさまざまな引き金が加わることで発作が起こる、と理解されています。
CGRP(シージーアールピー)と三叉神経(さんさしんけい)
現在、もっとも有力とされているのは、「三叉神経血管説」という考え方です。顔や頭の感覚を伝える三叉神経が何らかのきっかけで興奮すると、神経の末端から「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質が放出されます。CGRPは脳を包む膜の血管を広げ、周囲に炎症のような変化を起こし、それが痛みの信号として脳に伝わります。発作が繰り返されるうちに、脳が痛みに敏感になり、発作が起きやすくなることも知られています。
後述する新しい治療薬は、このCGRPの働きを抑えることで効果を発揮します。
セロトニンという神経伝達物質も片頭痛に関与しており、発作時の薬であるトリプタンはセロトニンの受容体に作用します。
片頭痛の治療法について
片頭痛の治療は、「発作が起きたときの治療(急性期治療)」と、「発作を起こりにくくする治療(予防治療)」の2本柱です。
発作が起きたときの治療
鎮痛薬(アセトアミノフェン・NSAIDs)
軽い〜中くらいの発作には、アセトアミノフェンや、イブプロフェン・ロキソプロフェンなどの鎮痛薬(NSAIDs)が使われます。市販薬で対処できる方もいます。
トリプタン
片頭痛のために開発された薬で、中くらい〜強い発作に用いられます。飲み薬のほか、点鼻薬や注射もあります。ポイントは「飲むタイミング」で、痛みが軽いうちに飲むと効果が出やすく、痛みが強くなってからでは効きにくくなります。ただし、前兆(閃輝暗点)の最中に飲んでも効果は期待できないため、頭痛が始まってから服用します。
トリプタンには血管を縮める作用があるため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の既往がある方、血圧のコントロールが不十分な方などには使えません。そのため、医師が診断と確認を行ったうえで処方します。
ラスミジタン
トリプタンが使えない方や効果が不十分な方に選択肢となる、比較的新しい飲み薬です。血管を縮める作用がないのが利点ですが、めまいや眠気が出やすく、服用後は車の運転ができません。
ゲパント製剤
リメゲパント(商品名:ナルティーク)と、2026年4月に発売されたアトゲパント(商品名:アクイプタ)の2剤が使用可能です。
薬の飲みすぎにご注意ください
発作時の薬を頻繁に使う状態が続くと、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」という別の頭痛を招き、かえって頭痛が増えてしまいます。目安として、トリプタンは月10日以上、市販の鎮痛薬は月15日以上使う状態が3か月以上続くと、この頭痛が疑われます。発作時の薬を月に10日以上使っている方は、予防治療を検討する時期です。
発作を起こりにくくする治療(予防治療)
頭痛が月に何度も起こる方、発作時の薬が効きにくい方、頭痛による生活への支障が大きい方には、予防治療を検討します。予防薬は毎日(または定期的に)続けることで、頭痛の回数・強さ・持続時間を減らし、発作時の薬の効きをよくすることを目指します。
飲み薬の予防薬
バルプロ酸(抗てんかん薬)、プロプラノロール(β遮断薬)、ロメリジン(カルシウム拮抗薬)、アミトリプチリン(抗うつ薬)などが、長く使われてきた予防薬です。「てんかんの薬」「うつの薬」と聞くと驚かれるかもしれませんが、これらは片頭痛の予防効果が確かめられており、頭痛の治療として正式に使われているお薬です。効果が出るまで1〜2か月ほどかかるため、毎日きちんと続けることが大切です。
CGRP関連抗体薬(注射)
2021年から日本で使えるようになった予防薬です。CGRPそのもの、あるいはCGRPの鍵穴(受容体)に結合する抗体で、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブの3種類があります。月1回(薬によっては3か月に1回)の皮下注射で、従来の予防薬で効果が不十分だった方や、副作用で続けられなかった方にも効果が期待できます。
保険診療で使えますが、薬の自己負担が高価なため、これまでの予防薬を試したうえで検討するのが一般的です。費用については付加給付や高額療養費制度が使える場合もありますので、ご相談ください。
CGRP受容体拮抗薬(飲み薬)
CGRPの働きを抑える飲み薬(「ゲパント」と呼ばれます)も登場しました。予防に使うアトゲパント(1日1回内服、2026年から)と、発作時にも予防にも使えるリメゲパントがあります。注射に抵抗がある方にも選びやすい選択肢です。こちらも自己負担は高めです。
治療の選択肢が増えたことで、「片頭痛は我慢するもの」という時代ではなくなりました。どの治療が合うかは、発作の頻度や強さ、持病、ライフスタイルによって異なりますので、医師と相談しながら決めていきましょう。
片頭痛を予防するための生活
お薬と同じくらい大切なのが、発作の「引き金」を知り、生活を整えることです。ただし、引き金には大きな個人差があり、また「引き金だと思っていたものが、実は予兆だった」ということもあります。たとえば「チョコレートを食べたら頭痛が起きた」のではなく、「頭痛の予兆として甘いものが食べたくなっていた」というケースがあります。
そのため、当院では、特定の食べ物を最初から避けるのではなく、まず頭痛ダイアリー(頭痛の記録)をつけて、ご自身のパターンを知ることをおすすめしています。

食べ物・飲み物
チーズ、赤ワイン、加工肉、チョコレート、カフェインなどが引き金になると報告されていますが、研究結果は一定しておらず、多くの方には影響がないこともわかっています。記録をつけて、ご自身にとって明らかに関係があるものだけを控えるようにしましょう。カフェインは、発作の引き金になる一方で、急にやめると「離脱頭痛」が起きることもあります。毎日たくさん飲んでいる方は、徐々に減らすのがおすすめです。
睡眠
寝不足も、寝すぎも発作の引き金になります。休日も平日と同じ時間に起きるなど、規則正しい睡眠を心がけましょう。
ストレスと「週末頭痛」
ストレスは発作の引き金になりますが、緊張から解放されたときに発作が起こる方も多く、「仕事が休みの週末に限って頭痛が起きる」というパターンはよく知られています。週末に寝だめをせず、生活リズムを崩さないことがポイントです。
運動
ウォーキングなどの適度な有酸素運動は、片頭痛の予防に役立つことが報告されています。ただし、激しい運動が発作の引き金になる方もいますので、体調に合わせて行いましょう。
天気
低気圧や天気の変化で頭痛が起きると感じる方は多く、日本では特によく知られた引き金です。ただし、気圧と片頭痛の関係を調べた研究の結果は一定しておらず、影響の度合いには個人差があります。天気で悪化しやすいと感じる方は、予定を調整したり、発作時の薬を携帯しておくと安心です。
片頭痛との向き合い方
「頭痛くらいで病院に行くなんて」と、長年ひとりで我慢してこられた方は少なくありません。しかし片頭痛は、正しい診断と治療で、生活が大きく変わりうる病気です。
頭痛にはいろいろな種類があり、緊張型頭痛など別の頭痛と対処法が逆になることもあります。また、片頭痛と緊張型頭痛の両方を持っている方もいます。自己判断で市販薬を飲み続けるのではなく、一度きちんと診断を受けることをおすすめします。
受診の目安
次のような場合は、我慢せずに医療機関にご相談ください。
- 頭痛で仕事や学校を休んだり、寝込んでしまうことがある
- 市販の鎮痛薬が効かない、または飲む日が月に10日以上ある
- 頭痛の回数が増えてきた、生活への支障が大きくなってきた(予防治療の相談ができます)
- 生理のたびに強い頭痛が起こる
- お子さんが頭痛を繰り返している
次の場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。すぐに受診してください。
- 今までに経験したことのない突然の激しい頭痛(数秒〜数分でピークに達する)
- 手足のしびれや力が入らない、ろれつが回らない、ものが二重に見える
- 発熱や首の硬さ(首を前に曲げにくい)を伴う
- 頭を打ったあとの頭痛
- 50歳を過ぎてから初めて頭痛が起こるようになった
- 前兆がいつもと違う、または前兆が1時間以上続く
よくあるご質問
片頭痛は治りますか?
片頭痛は体質的な要素が強く、現時点で「完全に治す」治療はありません。ただし、発作時の薬と予防薬を組み合わせることで、頭痛の回数や強さを減らし、生活への支障を小さくすることが期待できます。また、閉経後を中心に、年齢とともに軽くなっていく方も多くいらっしゃいます。
市販の鎮痛薬で対処してもよいですか?
軽い発作であれば、市販の鎮痛薬も選択肢のひとつです。ただし、効きが悪い場合や、飲む日が月に10日以上になってきた場合は、薬の飲みすぎによる頭痛を防ぐためにも受診をおすすめします。トリプタンや予防治療など、医療機関でしか受けられない治療があります。
頭痛が起きたら、動いた方がよいですか?
片頭痛は動くと悪化しやすいため、できれば暗く静かな場所で横になって休みましょう。眠ると楽になることもあります。反対に、緊張型頭痛は体を動かすと楽になる傾向があり、対処法が逆になります。
食べ物で気をつけるものはありますか?
チーズ・赤ワイン・加工肉・チョコレート・カフェインなどが引き金になる方がいます。ただし個人差が大きく、多くの方には影響がないこともわかっています。最初からすべてを避けるのではなく、頭痛の記録をつけて、ご自身の引き金を見つけることをおすすめします。
予防薬はずっと飲み続けるのですか?
いいえ。予防薬は、頭痛が落ち着いた状態が数か月続けば、医師と相談しながら減らしたり中止したりすることができます。
妊娠中・授乳中でも治療できますか?
使える薬に制限はありますが、対処法はあります。妊娠を考えている方、妊娠中・授乳中の方は、その旨をお伝えください。
おわりに――片頭痛は、我慢する時代ではなくなりました
片頭痛は、まわりから「ただの頭痛」と思われやすく、つらさを理解してもらえずに悩んでいる方が多い病気です。けれども、治療の選択肢はこの数年で大きく広がりました。
当院では、頭痛の種類を丁寧に見極めたうえで、発作時の対処法、予防治療、生活の工夫まで、一人ひとりの状況に合わせてご提案しています。「市販薬が効かなくなってきた」「頭痛で予定をキャンセルすることが増えた」「新しい予防薬について知りたい」――そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
「頭痛持ちだから仕方ない」と、長年あきらめてこられた方へ
片頭痛の治療は、この数年で選択肢が大きく増えました。市販薬でしのいできた方も、予防薬が合わなかった方も、今なら別の方法が見つかるかもしれません。当院では、まずお話をじっくり伺い、頭痛の種類を見極めるところから始めます。
次のうち、ひとつでも当てはまる方は、一度ご相談ください。
- 頭痛で仕事や学校、約束をキャンセルしたことがある
- 市販の痛み止めを飲む日が月に10日を超えている
- 痛み止めが以前より効かなくなってきた
- 生理のたびに強い頭痛が起こる
- CGRP関連抗体薬やゲパントなど、新しい予防薬について話を聞いてみたい
頭痛ダイアリーをお持ちいただくと、診察がスムーズです(なくても大丈夫です)。
参考文献
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