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群発頭痛とは?目の奥をえぐられるように痛む頭痛の特徴と治療

公開日 監修:院長 伊藤 たえ(脳神経外科専門医)

夜中、決まった時間に目の奥をえぐられるような激しい痛みで目が覚める。痛い側の目が真っ赤になり、涙と鼻水が止まらない。じっとしていられず、部屋の中を歩き回ってしまう。市販の痛み止めはまったく効かない――そんなつらい経験を、毎年のように繰り返していませんか。

それは「群発頭痛(ぐんぱつずつう)」かもしれません。群発頭痛は、あらゆる頭痛の中でもっとも痛みが強いもののひとつとされ、「痛みのあまり死にたくなる」と表現する患者さんもいるほどです。それにもかかわらず、比較的まれな頭痛であるため正しく診断されるまでに何年もかかる方が多く、眼科や耳鼻科、歯科を転々とされるケースも珍しくありません。

このコラムでは、群発頭痛の特徴・原因・治療法と、受診の目安をわかりやすくお伝えします。群発頭痛には、医療機関でしか受けられない有効な治療があります。どうか、ひとりで我慢しないでください。

夜中にベッドの端に座り、充血して涙が出ている右目を手で押さえ、目の奥の激しい痛みに耐える男性のイラスト

この記事のポイント

  • 片側の目の奥やこめかみに、えぐられるような激しい痛みが15分〜3時間続きます。痛い側の目の充血・涙・鼻詰まり・鼻水を伴うのが特徴です
  • 人口の約0.1%(1000人に1人程度)のまれな頭痛で、男性に多く、20〜40代で発症することが多いです
  • 市販の鎮痛薬は効きません。スマトリプタンの自己注射・点鼻薬や高流量の酸素吸入など、医療機関での治療が必要です

群発頭痛の特徴

群発頭痛の痛みは、「目の奥をえぐられるような」「焼けた棒を突き刺されるような」と表現される、非常に激しい痛みです。片側の目の周りやこめかみに突然起こり、1回の発作は15分から3時間ほど続きます。

他の頭痛と大きく異なるのは、痛みと同じ側に次のような症状を伴うことです。

  • 目の充血、涙が出る
  • 鼻詰まり、鼻水
  • まぶたが下がる、まぶたがむくむ
  • 瞳孔が小さくなる
  • 顔や額に汗をかく

さらに、発作中は「じっとしていられない」のも特徴です。片頭痛の方が暗い部屋で横になりたがるのに対し、群発頭痛の方は落ち着かず、部屋の中を歩き回ったり、頭を壁に打ちつけたくなったりします。

「群発期」と「寛解期」

群発頭痛のもうひとつの特徴は、発作が特定の期間に集中して起こることです。この期間を「群発期(ぐんぱつき)」と呼び、通常2週間から3か月ほど続きます。群発期の間は、1日に1〜数回(多い方では最大8回)の発作が、毎日のように起こります。特に夜中や明け方など、決まった時間に起こりやすいのも特徴で、寝入って1〜2時間後に痛みで目が覚める方が多くいらっしゃいます。

群発期が終わると、数か月から数年のあいだ発作がまったく起こらない「寛解期(かんかいき)」に入ります。群発期は毎年同じ季節に来る方も多く、「春と秋に必ず来る」といったパターンが見られることがあります。

なお、群発頭痛の方の1〜2割は、寛解期がほとんどない、または1年以上発作が続く「慢性群発頭痛」です。この場合は、継続的な治療が必要になります。

発作の引き金

群発期の間は、少量のアルコールでも数分〜1時間ほどで発作が誘発されます。寛解期には同じ量を飲んでも発作は起こらないため、「お酒を飲んだら必ず頭痛が起こる時期がある」というのは、診断の大きな手がかりになります。このほか、昼寝や睡眠リズムの乱れ、強いにおい、気圧の変化などを引き金として挙げる方もいます。

群発頭痛はどのくらいの人が経験するの?

群発頭痛は、比較的まれな頭痛です。世界の調査をまとめた研究では、およそ1000人に1人(約0.1%)が一生のうちに群発頭痛を経験すると推計されています。

男性に多い頭痛で、男性は女性の約3倍とされています。かつては「男性の病気」とされ、男女比が5〜7倍と報告された時代もありましたが、近年は女性の患者さんの割合が増えており、女性であることを理由に見逃されないよう注意が必要です。

発症は20〜40代が多く、30歳前後がピークとされています。ただし、10代や50代以降で発症する方もいます。

群発頭痛の原因について

群発頭痛の原因は、まだ完全には解明されていません。ただし、近年の研究で、脳の「視床下部(ししょうかぶ)」という部分と、顔の感覚を伝える「三叉神経(さんさしんけい)」が深く関わっていることがわかってきました。

視床下部――「体内時計」の中枢

視床下部は、睡眠と覚醒のリズム、体温、ホルモン分泌など、体のリズムを調整する司令塔です。群発頭痛の発作が決まった時間に起こること、群発期が毎年同じ季節に来ることは、この体内時計の乱れを強く示唆しています。実際、発作中の患者さんの脳を画像で調べた研究で、視床下部の活動が高まっていることが確認されています。

三叉神経と自律神経の反射

何らかのきっかけで三叉神経が興奮すると、その信号が脳の中で自律神経の経路に「飛び火」し、目の充血・涙・鼻水といった症状が同じ側に現れます。これを「三叉神経・自律神経反射」と呼び、群発頭痛の特徴的な症状はこのしくみで説明されています。かつては「血管が広がることが痛みの原因」と説明されていましたが、現在では神経のしくみが中心と考えられています。

遺伝的な体質

群発頭痛の方の5〜20%に、家族にも群発頭痛の方がいると報告されています。近年の大規模な遺伝子研究で、群発頭痛のなりやすさに関わる遺伝子の領域がいくつか見つかっており、体質的な要因があることが裏付けられつつあります。

喫煙との関係

群発頭痛の患者さんには喫煙者が多いことが知られています。

群発頭痛の治療法について

群発頭痛の治療は、「発作が起きたときの治療」と「群発期の発作を減らす予防治療」を組み合わせて行います。まれな頭痛であるため、片頭痛の治療とは大きく異なる点があります。

発作が起きたときの治療

市販の鎮痛薬、一般的な処方鎮痛薬は効きません

群発頭痛の発作は15分〜3時間で自然におさまるため、効くまでに30分〜1時間かかる飲み薬では間に合いません。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの鎮痛薬は、市販薬でも処方薬でも効果が期待できません。

スマトリプタンの皮下注射

発作を止める効果がもっとも確かめられている治療です。注射後5〜15分ほどで効果が現れます。日本では、ご自身で注射できる「自己注射キット」が群発頭痛に保険適用されており、医療機関で使い方を練習したうえで、自宅や外出先で発作時に使うことができます。

ただし、トリプタンには血管を縮める作用があるため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の既往がある方、血圧が高い方などには使えません。また、1日に使える回数に上限があります。

高流量の酸素吸入

自宅の椅子に座り、酸素濃縮器につないだマスクで酸素を吸入している男性のイラスト
在宅酸素療法のイメージ。発作が始まったらすぐに高流量の酸素を吸入します

100%の酸素を、1分間に7〜15リットルという多い量で、15分ほど吸入する治療です。発作が始まったらすぐに行うと、多くの方で15分以内に痛みが軽くなります。副作用がほとんどなく、心臓の病気などでトリプタンが使えない方にも使えるのが大きな利点です。

日本では2018年4月から、群発頭痛に対する在宅酸素療法が保険適用になりました。自宅に酸素の機器を設置し、発作時にすぐ吸入できるようにします。ただし、取り扱いのない医療機関もありますので、ご希望の方はご相談ください。

スマトリプタンの点鼻薬

注射ほどではありませんが、効果が期待できます。注射が苦手な方の選択肢になります。

飲み薬のトリプタン

効果が出るまでに時間がかかってしまうことがあります。

群発期の発作を減らす治療(予防治療)

群発期に入ったら、発作そのものを減らすための予防薬を毎日服用します。群発期が終わったら、医師と相談しながら徐々に減らして中止します。

ベラパミル

群発頭痛の予防治療でもっとも標準的なお薬です。もともとは不整脈や狭心症の薬ですが、群発頭痛の発作を減らす効果が確かめられています。群発頭痛では通常より多い量を使うことがあり、心臓の伝導に影響することがあるため、定期的に心電図を確認しながら使用します。

副腎皮質ステロイド

ベラパミルの効果が出るまでの「つなぎ」として、群発期の初めに短期間使うことがあります。効果は速やかですが、長期間の使用は副作用の面から避けます。

後頭神経ブロック

後頭部の神経の周りに、局所麻酔薬とステロイドを注射する治療です。群発期の初めに行うと、発作が減ることが報告されており、飲み薬と組み合わせて使われます。

そのほかの予防薬

ベラパミルで効果が不十分な場合や使えない場合には、炭酸リチウムやバルプロ酸などが検討されることがあります。ただし、これらの薬の効果を裏付ける研究は限られています。

慢性群発頭痛の場合

寛解期がほとんどない慢性群発頭痛では、予防薬を長期間続ける必要があります。標準的な治療で効果が不十分な場合は、頭痛専門医のいる医療機関と連携して治療を検討します。

群発期の生活で気をつけること

食事の席で勧められたビールをやんわり断り、炭酸水を飲む男性のイラスト
  • 飲酒:群発期の間は、少量でも発作を誘発します。群発期に入ったら禁酒しましょう。寛解期に飲んでも、通常は発作は起こりません
  • 睡眠:昼寝や寝る時間の変化が引き金になる方がいます。群発期はできるだけ規則正しい睡眠を心がけましょう
  • 記録:発作の時刻・持続時間・症状を記録しておくと、診断や治療の調整に役立ちます
  • 周囲への説明:発作中に落ち着かない様子を、周囲に誤解されてつらい思いをされる方もいます。「群発頭痛という病気で、発作中はこうなる」と、ご家族や職場に伝えておくことをおすすめします

診断されにくい頭痛だからこそ

群発頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛に比べて知られておらず、正しく診断されるまでに数年かかる方が少なくありません。目の充血や鼻水があるため眼科や耳鼻科を受診したり、「片頭痛」と診断されて片頭痛の飲み薬だけを続けていたりして、つらい発作を我慢し続けているケースがあります。

「痛みが激しすぎて、頭痛ではない気がする」「毎年同じ季節に来る」「お酒を飲むと必ず起こる時期がある」――こうした特徴は、群発頭痛を疑う大きな手がかりです。ぜひ、頭痛を診ている医療機関にご相談ください。

なお、群発頭痛と似た症状を起こす別の病気(脳の血管や下垂体の病気など)もあるため、初めて診断する際には、頭のMRIなどの画像検査を行うのが一般的です。

受診の目安

次のような場合は、早めに脳神経内科・脳神経外科・頭痛外来を受診してください。

  • 目の奥をえぐられるような激しい頭痛が、片側に繰り返し起こる
  • 頭痛と同じ側の目の充血・涙・鼻詰まり・鼻水を伴う
  • 発作中にじっとしていられない
  • 毎晩、決まった時間に激しい頭痛で目が覚める
  • 市販薬や処方された鎮痛薬がまったく効かない激しい頭痛を繰り返している
  • 片頭痛と診断されているが、片頭痛の薬で痛みが十分おさまらない

次の場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。すぐに受診してください。

  • 今までに経験したことのない激しい頭痛が突然起こった(くも膜下出血などとの区別が必要です)
  • 手足のしびれや力が入らない、ろれつが回らない、ものが二重に見える
  • 発熱や首の硬さを伴う
  • 意識がもうろうとする

よくあるご質問

市販の鎮痛薬で我慢していれば治りますか?

群発頭痛には、市販の鎮痛薬は効果が期待できません。スマトリプタンの自己注射や酸素吸入など、医療機関でしか受けられない有効な治療がありますので、我慢せずに受診してください。

群発期にお酒を飲んでもよいですか?

群発期の間は、少量のアルコールでも発作を引き起こします。群発期に入ったら禁酒をおすすめします。寛解期に入れば、通常はお酒を飲んでも発作は起こりません。

発作はどのくらい続きますか?

1回の発作は15分から3時間程度で、群発期には1日に1回から数回起こります。群発期は通常2週間から3か月続き、その後は数か月から数年、発作のない寛解期が訪れます。

女性でも群発頭痛になりますか?

なります。男性に多い頭痛(男性は女性の約3倍)ですが、近年は女性の患者さんも増えています。「女性だから群発頭痛ではない」ということはありませんので、目の充血や涙などの特徴があれば、受診時に医師へ伝えてください。

群発頭痛は治りますか?

現時点で「二度と群発期が来ないようにする」治療はありません。ただし、発作を止める治療と群発期の予防治療を組み合わせることで、つらい発作を大幅に減らし、日常生活を守ることが期待できます。また、年齢とともに群発期の間隔が長くなる方も多くいらっしゃいます。

酸素吸入は自宅でできますか?

できます。2018年から群発頭痛に対する在宅酸素療法が保険適用になっており、医療機関の処方のもとで自宅に酸素の機器を設置できます。取り扱いは医療機関によって異なりますので、ご希望の方はご相談ください。

おわりに――「この痛みは自分だけ」ではありません

群発頭痛は、痛みの激しさに比べて知られておらず、「誰にもわかってもらえない」と孤独を感じている方が多い病気です。まわりの人に「ただの頭痛でしょう」と言われ、つらい思いをされた方もいらっしゃるかもしれません。

けれども、群発頭痛には、発作を数分で止める治療や、群発期の発作を減らす治療があります。正しい診断がつけば、次の群発期への備え方も変わります。

当院では、頭痛の種類を丁寧に見極めたうえで、発作時の治療、予防治療、在宅酸素療法のご相談まで、一人ひとりの状況に合わせてご提案しています。「もしかして群発頭痛かもしれない」と思われた方は、どうぞお気軽にご相談ください。

「頭痛でそんなに大げさな」と言われて、我慢を続けてこられた方へ

群発頭痛は、経験した人にしかわからない激しい痛みです。そして、市販薬が効かないのは、あなたの我慢が足りないからではなく、薬の種類が合っていないからです。当院では、群発頭痛を疑う症状があれば、発作を止める治療と、次の群発期への備えを一緒に考えます。

次のうち、2つ以上当てはまる方は、群発頭痛の可能性があります。一度ご相談ください。

  • 片側の目の奥が、えぐられるように激しく痛む
  • 痛い側の目が赤くなる、涙や鼻水が出る
  • 発作中はじっとしていられず、動き回ってしまう
  • 毎晩、決まった時間に頭痛で目が覚める
  • 頭痛が続く時期にお酒を飲むと、必ず発作が起こる
  • 痛み止めがまったく効かない

発作の時刻や症状をメモしてお持ちいただくと、診察がスムーズです。

参考文献

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  • Headache Classification Committee of the International Headache Society (2018). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia, 38(1), 1-211. DOI: 10.1177/0333102417738202
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  • Harder AVE, Winsvold BS, Noordam R, et al. (2021). Genetic susceptibility loci in genomewide association study of cluster headache. Annals of Neurology, 90(2), 203-216.
  • 一般社団法人日本頭痛学会 https://www.jhsnet.net/

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