病名から探す 認知症・もの忘れ

アルツハイマー型認知症とは?——初期症状・進行・新しい治療まで

公開日 監修:理事長 菅原 道仁(脳神経外科専門医)

「その話、さっきも聞いたよ」。家族にそう言われることが増えた。冷蔵庫を開けると、同じ食材がいくつも並んでいる。しまい忘れ、置き忘れ、探し物の毎日——。そんな変化に、ご本人として、あるいはご家族として、心当たりはありませんか。

それは、アルツハイマー型認知症の始まりのサインかもしれません。ただ、早とちりは禁物です。年齢による自然なもの忘れとは、見分けるポイントがあります。そして今は、早く見つけるほど選べる対策が増えてきた時代です。このコラムでは、初期症状の見分け方から新しい治療までを、できるだけやさしくお伝えします。

この記事のポイント

  • アルツハイマー型は認知症の中でもっとも多いタイプで、日本の調査では認知症全体の約6〜7割を占めます。「新しいことを覚えられない」症状から始まります
  • 年齢によるもの忘れは「体験の一部」を忘れ、アルツハイマー型は「体験そのもの」を忘れます
  • 原因物質に働きかける新しい薬が使えるようになり、早期発見の意味が以前より大きくなっています

アルツハイマー型認知症とはどんな病気?

アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ(ベータ)」という特殊なたんぱく質が、長い年月をかけて脳にたまり、神経細胞が少しずつ壊れていくことで起こる認知症です。

初期のいちばんの特徴は、新しいことを覚えられなくなることです。同じことを何度も聞く、少し前の出来事をまるごと忘れる、物をしまった場所がわからなくなる。昔のことはよく覚えているのに、最近のことが抜け落ちるのが特徴です。

進行すると、日付や場所がわからなくなる、料理や買い物の段取りができなくなる、道に迷う、といった症状が加わり、日常生活に手助けが必要になっていきます。ご本人には「忘れている」という自覚が薄いことも多く、その場を取り繕うような受け答えをされることもあります。ご家族が「あれ?」と気づいて受診につながるケースが多くみられます。

なお、もの忘れはあっても日常生活はまだ自分でこなせている段階を「軽度認知障害(MCI)」と呼びます。この段階で気づくことがとても大切です。

どのくらいの人がなるの?

アルツハイマー型は認知症の中でもっとも多く、日本の調査では認知症全体の約6〜7割を占めています。厚生労働省の研究班による2022年の調査では、65歳以上の認知症の方は約443万人、MCIの方は約559万人と推計されており、誰にとっても身近な病気になっています。

年齢が上がるほど増え、女性にやや多い傾向があります。ご家族に認知症の方がいる場合、リスクはやや高くなりますが、遺伝だけで決まる病気ではありません。生活習慣の見直しによってリスクを下げられる可能性があることも、研究で示されつつあります。

なぜ起こるの?

発症の20年ほど前から、脳内に「アミロイドβ」という特殊なたんぱく質が蓄積し始めます。続いて「タウ」と呼ばれるたんぱく質も蓄積して神経細胞を障害し、記憶を司る海馬を中心に脳の萎縮が進むと考えられています。

蓄積の根本原因は未解明ですが、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、運動不足、社会的孤立、難聴の放置などがリスクを高めることが判明しています。そのため、日頃の生活習慣を見直すことが有効な予防対策となります。

どんな治療があるの?

従来の治療では、病気の進みを抑えるお薬(ドネペジルやメマンチン等)の処方が中心に行われてきました。

近年になり、根本的な要因であるアミロイドβを除去する革新的な医薬品(抗アミロイドβ抗体製剤)が国内承認を受け、公的医療保険の対象となっています。

ここでご理解いただきたいのは、現在実用化されているお薬も病態を完全治癒させるものではないという点です。検証データにおいて状態悪化を一定期間遅らせる作用が確認されていますが、期待できる改善の度合いには限界が存在します。

また、この薬には次のような条件があります。

  • 対象は早期のアルツハイマー病(MCI〜軽度の認知症)に限られます
  • 使う前に、脳にアミロイドβがたまっているかを調べる検査(アミロイドPETまたは脳脊髄液検査)が必要です
  • 脳のむくみや小さな出血(ARIA〈アリア〉と呼ばれる副作用)が起こることがあるため、定期的なMRIでの確認が必要です

このため、実際の処方や投与は大学病院や総合病院などの専門医療機関で実施されます。当院にて適応が見込まれる患者様につきましては、適切な連携病院をご提案いたします。

薬だけがすべてではありません。運動や人との交流、生活習慣病の管理など、進行をゆるやかにするために日常でできることは多くあります。介護サービスの活用やご家族への支援も、治療と同じくらい大切です。

予防のためにできることは?

ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にすること、高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)をきちんと治療すること、バランスのよい食事と質のよい睡眠が基本です。

人との交流や、趣味・読書など頭を使う活動も、脳の「予備力」を保つのに役立つと考えられています。聞こえが悪くなったときは放置せず、補聴器などで対応することも、認知症のリスク要因への対策として国際的な専門家委員会が推奨しています。禁煙・節酒も心がけましょう。

特別なことを我慢する必要はありません。「体と頭と人付き合いを保つ」ふつうの生活こそが、いちばんの予防です。

当院の理事長は、認知症予防への取り組みを『認知症予防のカキクケコメソッド』(かんき出版)という書籍にまとめています。日々の生活でできる予防のヒントを紹介していますので、あわせてご覧ください。
Amazonで見る

これって受診すべき?——緊急度の目安

  • すぐに119番
    • 急にろれつが回らない・手足が動かない・意識がもうろうとしている(認知症ではなく脳卒中の可能性があります)
  • 早めに受診
    • もの忘れが数週間〜数か月で急に悪化した(治療できる別の病気が隠れていることがあります)
  • 近いうちに当院へご相談
    • 同じことを何度も聞く、と家族に言われる。少し前の出来事をまるごと忘れている
    • 日付や曜日がわからなくなることが増えた。慣れた作業の段取りが悪くなった
    • 家族から見て、以前と様子が変わったと感じる

※ご本人が受診に乗り気でない場合など、ご家族のみでのご相談は保険診療の対象外となります。まずはお電話でご相談ください。

よくあるご質問

年齢によるもの忘れと、どう違うのですか?

年齢によるもの忘れは「体験の一部」を忘れます(食事の内容を思い出せない、など)。アルツハイマー型では「体験そのもの」を忘れます(食事をしたこと自体を忘れる、など)。ヒントがあっても思い出せない場合は、一度検査を受けることをおすすめします。

治る病気ですか?

現時点で完治させる治療はありません。ただ、進行をゆるやかにする薬に加えて、早期であれば原因物質に働きかける新しい薬も選択肢になり得ます。だからこそ、早く見つけることの意味が大きくなっています。

どんな検査をするのですか?

問診、認知機能検査(質問形式のテスト)、MRIなどの画像検査、血液検査が基本です。脳の縮み具合を見るだけでなく、治療で改善できる別の病気(正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺の病気・ビタミン不足など)が隠れていないかも確認します。

予防はできますか?

確実に防ぐ方法はまだありません。ただ、運動・生活習慣病の管理・人との交流・聞こえへの対応などで、リスクを下げられる可能性があると考えられています。40〜50代からの生活習慣が将来に影響します。

おわりに――「年のせい」と決めつける前に

「もの忘れは年のせい」。そう考えて受診が遅れてしまう方が、とても多くいらっしゃいます。しかし今は、早く見つけるほど選べる対策が多い時代です。診断がつくことは、これからの生活を考える出発点にもなります。

次のうち、1つでも当てはまる方はご相談ください

  • 同じことを何度も聞く、と家族に言われたことがある
  • 少し前の出来事を、まるごと忘れていたことがある
  • 探し物・しまい忘れが明らかに増えた
  • 家族の様子が「以前と違う」と感じている

ご家族のみのご相談も、お電話で承ります。

症状はまだないけれど早めに調べておきたい方には、脳の萎縮や血管の状態をMRIで確認できる脳ドック(自費診療)もご用意しています。検査内容・費用・注意点は脳ドックのご案内ページをご確認ください。

参考文献

  • 日本神経学会(監修)『認知症疾患診療ガイドライン2026』医学書院, 2026.
  • 九州大学大学院医学研究院(研究代表者:二宮利治)「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究 報告書」令和5年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業), 2024.
  • 日本脳ドック学会(編)『脳ドックのガイドライン2026』中外医学社, 2026.
  • Livingston G, et al. (2024). Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet, 404(10452), 572-628. DOI: 10.1016/S0140-6736(24)01296-0
  • van Dyck CH, et al. (2023). Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. New England Journal of Medicine, 388(1), 9-21. DOI: 10.1056/NEJMoa2212948
  • Sims JR, et al. (2023). Donanemab in Early Symptomatic Alzheimer Disease: The TRAILBLAZER-ALZ 2 Randomized Clinical Trial. JAMA, 330(6), 512-527. DOI: 10.1001/jama.2023.13239

気になる症状は、お近くのクリニックへご相談ください

〒107-6102 
港区赤坂5-2-20赤坂パークビル2F
03-5573-8822
FAX03-5573-8820

営団地下鉄千代田線赤坂駅より徒歩5分。
丸の内線・銀座線赤坂見附駅より約10分。
詳しいアクセスを見る >

診療時間 月 火 水 木 金 土 日/祝
9:00〜17:00 ● ● ● ● ● ● ー
脳ドック・DWIBS・
診療 予約
菅原クリニック「東京脳ドック」アクセス地図
03-5573-8822
Web予約